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松籟と蝉時雨

古び松の幹に しがみつく小さき歌姫
幾年月を越え 今宵の別れを惜しむ

松脂の香り 夏の終わりを告げる
翅を震わせ 最後の力振り絞る

富士の頂 悠久の時を刻み
蝉の一生 一瞬の煌めき

夕陽に染まる空 松影長く伸び
されど蝉は知る 去りゆく夏の気配

鳴き声は已に絶え 静寂が支配する
ただ翅の震えが 別れを囁く

夕焼けの富士 松と蝉を包み込む
永遠と刹那 美しく交錯する

最後の飛翔へ 今こそ旅立つ時
松の葉擦れに 蝉は夢見る

悠久の山に 見守られながら
儚き生命 黄昏の空へ羽ばたく



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