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わたしの推しはノンバイナリー

あなたに「推し」はいますか?

推しのカミングアウトに立ち会ったことはありますか?

私はある。

タイ語なのでなんのこっちゃわからないと思うが、とにかくこれがカミングアウトしたツイートだ。

要約すると、友人(所属アイドルグループのメンバー)に差別的な態度を取る人はいないと証明できます。なぜなら、私自身がノンバイナリーだからです、と書かれている。

私はこのカミングアウトを境に、たくさん、たくさん考えた。

推しの心を尊重し、これからも大切に応援していくために。

推しの名前はCopter

Copter Panuwat

1997年1月31日生まれ、2022年現在は25歳。
タイ・バンコクで役者、アイドルなどの活動をしている。

本格的なブレイクのきっかけとなったのは、BLドラマ「2moons」への出演。
その後、アイドルグループやドラマ出演を主軸に芸能活動を続けている。

特技は小さい頃からずっと続けてきた歌とダンス。
絶対女性ファンには受けない、LOLやFPSの生配信ばっかりやっちゃうような、可愛い推しだ。

私は2017年からずっと、異国の地からささやかに応援し続けてきた。

そもそも、ノンバイナリーとは?

何を考えるにも、ノンバイナリーの定義について知らなきゃ意味がない。
私自身はノンバイナリーではないので、まだ完璧な理解は出来ていないと思う。
だから、これからたくさん知っていきたい。
(もし間違いがあればご指摘願います)

ノンバイナリーとは、体の性別に関係なく、心の性別を男性、または女性と当てはめられない、当てはめたくない人を指す。

似たような言葉には”Xジェンダー”もある。
Xジェンダーとノンバイナリーの違いは、性表現を含むか含まないか。

ノンバイナリーは性自認と性表現どちらも含み、Xジェンダーは性自認のみを指す言葉となる。

性自認:体の性別に関わらず、自分をどの性別として認識しているか
性表現:外見や言葉遣いなどをどの性別として振舞うか

そして、これはおそらく多くの人が誤解している点だと思うが、ノンバイナリーであることと、恋愛的指向や性的指向はまったく関係がない。

恋愛的指向:どの性別に対して恋愛感情を抱くか
性的指向:どの性別に対して性的感情を抱くか

近年海外では、プロフィールに使用して欲しい代名詞(He/Him、She/Her、They/Them)を書く文化が広まっている。
ノンバイナリーのように、特定の性別で呼ばれたくない人が選べる第3の選択肢として、They/Themが浸透してきたようだ。

推しに対して改めたこと

上記記事は先日カミングアウトについて取り上げられた記事だ。
この記事を拡散する旨のツイートに「Copterくんの記事を是非読んでください!」と日本語で一文添えられていた。

それを見て、私は本気でものすごく悲しくなった。

このnoteを読んでいるあなたは、その理由がわかるだろうか?

ツイートした人に悪気がないのも、本当に色んな人に記事を読んで欲しい気持ちで発信したのも、わかる。

でも、本質を何も理解してないな、と思ってしまった。

だから、私は使わない。

代名詞敬称の話だ。

推しは男性の体で生まれ、男性で活動してきたので、これまでは男性として扱って来たけど、それをまるきりすべてやめた。

推しに対して「彼」と使うのも、「Copterくん」と呼ぶのも、全部。

もちろん、「彼」という代名詞も、「〇〇くん」という敬称も、100%男性だけに対して使うものではない。

だけど、一般的に広く知られている、使用されている意味としては、やはり男性を指す場合がほとんどだろう。

例え日本語であったとて、本人がわからないとはいえ、私自身が推しを尊重するために、これは絶対に徹底していこうと決めた。

ただの自己満足かもしれないけど、それが私なりの応援の仕方だ。

それはそれとして、でも、日本語の三人称には相応しい物がないな、と気づいたのもまた発見だった。

名前に置き換えればいいのだけれど、すべてに名前を適用してしまうと、文章がうざったくなる時もある。

今後、何かちょうどいい言葉が見つかるといいな、と思いつつ、「推し」というワードの便利さにもまた気づかされた。

多分、私が「彼」「彼女」と入れたくなる箇所を、「推し」と入れ替えても違和感はない。

カミングアウトの勇気と必要性

ツイートで公表したそのあと、親御さんに見られるのが怖かったと記事中に記載があった。

私から見ても、いつも子どもたちを溺愛するご両親、そして仲良しな二人の姉。
お母さんは撮影現場にも度々足を運び、我が子の活動を献身的に支えているのは、ファンなら誰でも知っている。

そんな、こちら側が「どんなあなただって受け入れて貰えるよ」、と思えるようなお母さんをもってしても、やはり「恐怖」は拭えないものなんだ。

私は、カミングアウトは必ずしも必要なものだとは思わない。

日本では、歌手の宇多田ヒカルさんがノンバイナリーを公表したそうだが、中々正しく受け止めて貰えていない側面もあるようだ。

でも、本当の自分を周りにも知ってもらいたい、正しく扱って欲しい、同じように苦しむ人に勇気を与えたい・・・。

様々な理由でカミングアウトを必要だと思った人がいるのなら、それは尊重されるべきだとも思う。

今回のカミングアウトを受けて、例え見た目が男性もしくは女性とはっきり判別出来る場合でも、シスだと決めつけるのは本当に失礼だと実感した。

シス:シスジェンダー。生まれ持った体の性別と、心の性別が一致している人のこと。

その人の心の内、他人に自分の性別をどう捉えてほしいのかというのは、言ってもらわなければわからない。

そういった意味でも、カミングアウトが必要な場合はあるのかもしれない。

これに関しては、正解はないのだけれど。

推しがどれだけの覚悟を持って、どれだけ勉強して、どれだけ自分の中で格闘して、この公表に至ったのか、私は理解してあげることができない。

だけど、ツイッターのプロフィール欄に書かれた「THEY/THEM OR JUST MY NAME😊」という一文を見て、やっと堂々とできるって気持ちが表れている気がした。

その勇気を称えて、受け止めて、応援するだけなら出来る。

願わくば、特別な”カミングアウト”は必要ない世界が訪れますように。

私たちに、あなたの心の内を晒してくれて本当にありがとう。

価値観のアップデート

この一連のnoteは、自分の中で推しに対するスタンスや考え方を整理するために書いた。

もちろん、それを公開することで、ノンバイナリーについて知って欲しい、少しだけ考えてみて欲しい、という思いもある。

もしも、あなたの推し、ひいては家族、友人など身近な人達から、カミングアウトを受けたら、自分はどう思うのか、どう接するのか?と、考えてみるきっかけにして欲しかった。

価値観や固定観念のアップデートというのは、本当に難しい。

ここ最近、プライド月間もあって、選挙も間近で、足りない頭だけれど色々と考えを巡らせる機会が多かった。

私とCopterは同い年なのだけれど、そんな推しが、ジェンダーに、自分自身に、関心を持ち、勉強し、向き合い。

そしてひとつの結論を出し、世間に公表するという大きな一歩を踏み出した。

その瞬間に立ち会えたからこそ、私も一歩前進出来た気がする。

でも、「人を見た目で判断してはいけない」、「今までと何も変わらず普通に接すればいい」、言葉では簡単でも、行動に移すのは全然簡単じゃない。

「彼氏/彼女はいるの?」
「お兄さん/お姉さん」
「男性/女性らしいね」

無意識のうちに出る言葉が、誉め言葉や何気ない言葉だとしても、誰かを傷つけてきたのかもしれないと気づくきっかけになった。

カミングアウトを受けたところで、推しを好きな気持ちも応援する気持ちも、何も変わらないし変える必要もない。

だけど、カミングアウトした人を尊重するには、私達が変わらなきゃならないことも絶対にある。

それが、どれだけ難しいのか、本当に今回身を持って実感した。

ドラマや映画なんかで、カミングアウトした人に対して、すぐには受け入れられないから時間が欲しい、と伝えるシーンを見たことがある。

視聴者側は「家族(友人)なんだから、受け入れてあげなよ」って思うかもしれない。

でも、当事者になってみると、時間が欲しいと思う気持ちがよくわかった。

理解したい、受け入れたい、好きな気持ちは変わらない、それが紛れもない本心なのだけれど、本当の意味で受け入れて、自然に接するには時間が必要なのもまた現実だ。

価値観、固定観念のアップデートには時間がかかるけれど、諦めなければ更新し続けられるはず。

人間は生き続ける限り、学ぶ必要がある。

あなたについて、ジェンダーについて、私について。

考えるきっかけを与えてくれて、本当にありがとう。

あなたのジェンダーもセクシュアリティも関係ない。

私にとってあなたは自慢の推しで、これまでもこれからも応援したい人、ただそれだけ。

これからもよろしくね、Copter。


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