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2020/02/03 『舞台 文豪ストレイドッグス』/舞台は現実にある魔法

昨日『体内活劇 はたらく細胞』を観て、芝居を観たい気持ちが高まった。今日は有給を取っていたので、『舞台 文豪ストレイドッグス』3部作を観た。

第1作 舞台 文豪ストレイドッグス
第2作 舞台 文豪ストレイドッグス 黒の時代
第3作 舞台 文豪ストレイドッグス 三社鼎立

『体内活劇 はたらく細胞』とは対照的で、具体的な背景が一切ない舞台。第1作・第3作は原稿用紙、第2作は夥しい数の本のページが配されている。劇中、プロジェクションマッピングも使用されるが、具体的なものは提示しない。限りなく具体性が削ぎ落とされた、抽象的な世界。セットらしいものは、第2作「黒の時代」で鍵となる場「ルパン」のバーカウンターのみだ。

一方で、第1作・第3作では、登場人物たちの特殊能力たる「異能」の表現を様々な身体表現で披露する。そのありさまは舞踊だ。アンサンブルメンバーたちの黒子的な働きによって、大胆な表現として舞台に現れる。そして「異能」をまとって演者たちが演技で魅せる。

場の抽象性と身体表現の具体性という両極端なものの融合。そこで、観客であるわたしが見るのは、虚構の向こう側にある目に見えないもの。

この3部作の芝居を観る前に、既に原作漫画を読み、アニメも全部観ていた。経験を逆戻りすることはできず、まっさらな状態で舞台を観ることはできない。だから、舞台で提示されないものもおのずと補完して観てしまうところがある。でも、演出も演技も、そういう観客の経験に依存したありようではない。条件の限られている舞台でしかできない、舞台だからこそできる表現を追求している。舞台を作り上げる人たちの発想と熱量とに圧倒される。

芥川龍之介役・橋本祥平さんが第1作のインタビューで「子供の頃から『技』を出したかった。それが叶った」と話していた。
第2作だけの登場人物となった織田作之助役・谷口賢志さんの芝居を、共演した太宰治役・多和田任益さんが引き受けて第3作に臨むというのも素敵だ。

目に見えないものを見せる。日常で不可能なものを可能にしてしまう舞台は、眼前で生身の人が見せてくれる現実にある魔法だ。

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《2020/02/03 補記》
第2作の特典DVDを見て驚いたのは、織田作之助役・谷口賢志さんの稽古の様子だ。まだ稽古の序盤の時期で、他の人たちが台本を確認しながら進めているときに一人だけ台本を見ていない。少なくともDVDで見られる範囲ではどの場面でもそうだった。彼は稽古場へは台詞を全部頭に入れてから臨んでいたのだ。谷口さんの意気込みが窺い知れる。(先月末の君沢さんのイベントで、谷口さんの仕事への姿勢について、君沢さんも尊敬するのだと話していた。)

わたしは第2作「黒の時代」を何度観ても毎回泣いてしまう。今回初めてストリーミング配信でなく、DVDで観たことで、こういう舞台裏を見せてもらって、俳優の意気込みは舞台も画面も超えて伝わるものなのだなと思いました。たぶん次観たって泣いてしまうのだろう。名作です。

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クボタエリナ
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