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2020/02/02 『体内活劇 はたらく細胞』/芝居の魅力

舞台『体内活劇 はたらく細胞』をDVDで観た。
原作漫画とアニメのおもしろさは、アニメ放送当時に中3だった生徒達が教えてくれた。一緒に過ごした3年間で、彼らにはいろんなものを紹介したし、彼らもいろんな本や音楽を教えてくれた。その中でも一番はまったものが、清水茜『はたらく細胞』だ。いわゆる「2.5次元舞台」版である『体内活劇 はたらく細胞』もあるとそのときに知ったものの、そこまでは観ていなかった。

ところが、今は。
先日すっかり俳優の君沢ユウキさんに骨抜きにされ、これまでの彼の仕事を知ろうとしている。ここで再び舞台版『体内活劇 はたらく細胞』と遭遇することとなった。君沢さんめあてで見始めたが、すっかり作品そのものに引き込まれてしまった。凄くおもしろかった。(君沢さんの演技もくどいくらいのキラーT細胞ぶりで、そういうのが大好きなわたしは大喜びしました。)

原作のストーリーに沿いながら、手を加えるのは複数のエピソードがつながるように少し整える程度になっている。その加減もうまい。演者もいいのだけれど、それを支える舞台装置と演出がとりわけすばらしかった。

舞台装置はいたってシンプル。背景をすべてプロジェクションマッピングで示す。細かいところまで示せるので、人間の暮らす街のごとき体内世界という独特の世界観がよく分かるようになっている。血しぶきもプロジェクションマッピングで効果的に表現する。その中に、演者次第のアナログな小道具と演出を盛り込む。すごくうまい。観客を楽しませる仕掛けがたくさんある。

こういう作品の観客は、芝居好きや観劇に慣れている人だけでなく、その作品が好きで観に来る人も多い。だからこそ、分かりやすさは一つの肝なのだと思う。その一方で、漫画やアニメではできても、舞台ではできないこともある。それをどのように解消するかが、演者とスタッフを合わせた舞台の人たちの腕の見せ所だろう。客席での芝居や、観客を巻き込んだ演出も舞台だからできることだ。演者は先行するアニメのイメージを崩さずに自分の色を出す演技が必要で、求められるもののハードルは高い。全体として何を求められるかは作品によって異なれど、様々な条件をクリアしながら作り上げる舞台が質の高いものにならないはずがない。そういうことを考えると、2.5次元舞台が人気になるのも自然なことのように思える。

シティボーイズのコントを観て以来、喜劇やコントが好きになり、彼らの舞台だけでなく、劇団☆新感線イッセー尾形ラーメンズも観るようになった。井上ひさしの書く話が好きで、蜷川幸雄演出の作品もいくつか観た。維新派も好きだった。歌舞伎もおもしろい。とはいえ、コントの原体験は、ザ・ドリフターズだ。『8時だョ!全員集合』も『ドリフ大爆笑』も大好きでいつも見ていた。

幕が開いている間、ぐっと引き込まれる体験に惹かれる。ここしばらくは、音楽ライブばかりでほとんど芝居を観ていなかったけれど、今日は芝居のおもしろさを久々に実感した。芝居の数だけ表現がある。そういうことを『体内活劇 はたらく細胞』は思い出させてくれた。


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《補記 2020/02/02》
『体内活劇 はたらく細胞』は第2弾も昨年上演されていたそうで、観られなかったのが残念。3月にDVDが出るのでそちらで観ます。どうやら残りの原作既刊分を全部盛り込んでいる様子。楽しみです。(演者は一部、第1弾から変わっているので、それはどうなっているかしら。)


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