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まずは一流を完コピする

先達はあらまほしきことなり

徒然草の第52段、「仁和寺にある法師」
で始まる文章の最後を飾る教訓である。
要は、先達=指導者がいてほしいものだ
という内容である。

勉強であれ、
スポーツであれ、
仕事であれ、
先を進んでいる人=先達が、
見本、お手本となってくれることは
大変好ましいことだし、
むしろなくてはならないこと。

そして、本当にその道の一流を目指す
のであれば、一流の先達をまずは
完全にコピーし、自分のものとする
位の勢いが必要
だ。
何ごとにも「型」があり、
まずはその「型」を身に付けるために
師匠を徹底的に真似る。


「型破り」ができるのは、
「型」を完全に身に付けてから。
完全に身に付けないうちに、
「型」にはまらないやり方をすれば、
「型なし」に堕してしまう。

これら一連の話は、複数のソースから
話を聞いたり、本で読んだり、
映像で観たり、、、
割と広く知れ渡った話ではないかと
思われる。

しかしながら、これを実際に実践して
いる人の話というのは、なかなか
お目にかかれるものではない。


少しだけ読みかじった後、ずーっと
Kindleの中に眠ったまま一年ほど
放置してしまった本を発見し、
ようやくほぼ読み終えそうなところ
まで来たのだが、その本の著者が
正にこの「型の完コピ」を自らの
信条として生きて来た、
そんなすごい方なのである。

ミシュランの星付きイタリアン、
ラッセのオーナーシェフである
村山太一さんこそ、その人。

彼の行動力、そしてその行動力が
生み出してきた数々の「奇跡」とも
呼ぶべき軌跡。
うじうじ悩んでいるヒマがあったら
とにかく当たって砕けろ!
と言わんばかりの熱さを感じる。

一流になるなら、一から自分でやらずに、すでに一流になっている人に教わればいい

その方が圧倒的な速さで成長できる!
そう理解した彼は、日本でも最高峰の
料亭のうちの一つ「吉泉」で修業。
とにかく「完コピ」を心掛けて修行に
いそしんだ。

そして、師匠の心を読み、先回りして
行動するように心がけ、その実践が
やがて実を結んでいく。

紆余曲折あって、イタリアに渡った
後も、ミシュラン三つ星の名店
「ダル・ペスカトーレ」で修業する
ために、まず最初にカジュアルな
トラットリアで力をつけ、
更に別のミシュラン二つ星で
実力と共に箔を付けた。

満を持して「ダル・ペスカトーレ」に
チャレンジし、極めて狭き門を、
何とかこじ開ける。
そして、「生涯の師匠」と呼ぶシェフ、
ナディア・サンティーニから全てを
吸収すべく、怒涛の「完コピ」
行ったのである。

この辺の修行のくだりは、
読んでいて本当にワクワクし通し。
当時のご本人は、それはもう死ぬ気で
毎日胃の痛い思いをしながら日々を
過ごしていたに違いないのだが、
最終的に道を切り拓いていく彼の
物語は、読む者に勇気や希望を
与えてくれる。

「この人のようになりたい!」
という師匠を見つけること。
そして、その師匠を、一挙手一投足、
更には呼吸のレベルまで、完全に
コピーして自分のものにしようと
試みる
こと。

そこまでやって、「型」を自分の
ものにできる人こそが、
一流を超えていく「超一流」の
高み
にまで達するのだろう。
そんな感慨を覚えるのだった。

実は、昨年末にラッセに行く予定を、
コロナ禍の影響で逃した。
それ以来、リベンジの機会を伺って
いたが、未だ果たせていない。
この本を読み進めるうちに、
これは絶対に現場に行かねば!
という強い思いに駆られている。
早いタイミングでの来訪を、
心に誓うのであった。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。