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一燈照隅、どこを照らすか

四字熟語と言うのは、
人生の教訓をわずか4文字に
詰め込んで、
その行間から豊かな意味を
我々に伝えてくれる。

私が好きな四字熟語の中に、
「一燈照隅」(いっとうしょうぐう)
がある。
文字通り、
「一つの燈(あかり)で隅を照らす」
という意味だが、
まずは一隅(ひとすみ)でよい、
身近なところを自らの燈で照らして
いこう
、そんなニュアンスだと
捉えている。

この四文字には続きがある。
「万燈照国」(ばんとうしょうこく)
すなわち、一つひとつの燈がたくさん
集まることで、やがて国全体をも
照らす
ことになる、そんな意味合い
である。
一隅を照らすことしかできないほど
個々人の力は小さくとも、
志ある人々がみな自分の持ち場を
照らしていけば、国全体が明るく
照らされるに至るという、
希望に満ちた言葉だ。

この「一燈照隅、万燈照国」は、
かの最澄が説いたと言われている。
長い歴史の中で、大切に受け継がれて
きた由緒ある言葉なのだ。

最近はソーシャルビジネスに大きな
注目が集まっている。
若い人たちの中には、
非常にピュアに、世界をより良い
方向に変えていきたいという
一途な気持ちを抱いて、
ソーシャルビジネスに飛び込んでいく
人の割合が増えているように聞く。

「一燈」であっても、自分の気持ち、
想い、志を大切に、一隅を照らすべく
奮闘しようとする心意気、とても
素晴らしいと思っている。

私自身も、何かこの社会に貢献する
ことができないか、
世の中をより良い場所にするために
何かやれるのではないか、
そんなことを時折考える。

その度に、思い返すこと。
それは、大それたことを考える前に、
まずは自分の目の前の人を幸せに
することを考えよ

という大原則だ。

世の中を見事に改革するような
大げさなことは、そう簡単に実現
できるものではないし、
時間もお金も人的資源も必要に
なるだろう。

もちろん、大きなことを成し遂げよう
とする心意気は大切だ。
決して否定する必要はない。

しかし、自分の目の前の人を気分よく
させることすらできない人が、
本当に広く世の中を変えていける
ような大事がなせるのか、甚だ疑問

なのである。

大義、大志はしっかりと胸に抱きつつ、
目の前にいる人を喜ばせる。
目の前にいる人を楽しませる。
目の前にいる人を大切に思い遣る。
地味に見えるそのような活動を、
一つひとつ積み重ねていく。

そんな人間が一人、二人と増え、
やがて千人、万人となり、
国全体に広がっていくことで、
世の中があまねく照らされる
ことになる。

だから、まずは自分の目の前を
照らそう。
そして、同じように目の前を
照らしてくれる同志を少しずつ
増やそう。


夜空を彩る見事な中秋の名月が、
我々をやさしく照らすのを眺めながら、
大いなる自戒と共にそんなことに
思いを馳せるのだった。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。