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としまえん、94年の感謝を伝える広告

「としまえんが閉園」
このニュースが話題となったのは、
まだ記憶に新しいところ。
その名の通り、豊島区にある遊園地
であるとしまえん、何と94年もの
歴史を重ねていたというのに驚いた。
私自身、足立区で育つ中で、この
としまえんは比較的身近な存在、
特に夏場のプールには何度もお世話に
なった思い出深い場所だ。

そんなとしまえんが閉園するにあたり、
94年間お客様からご愛顧いただいた
ことへの感謝の気持ちを表したい、
ということで、博報堂に広告制作の
依頼があったようだ。
同社のアートディレクターである
後藤大氏は、「感謝を伝える」という
お題をもらい、こう考えたらしい。

ぼくたちは、としまえんの最後にふさわしい、いちばんカッコいい去り際で、としまえんを送り出したいと思いました。
例えば、としまえんがもしも人だとしたら、どんなお別れの挨拶をするだろう。大げさなのはキライだよな。湿っぽいのもらしくないし。多くは語らず、ジョークのひとつも言って悲しむみんなを笑わせて、そんでニヤッとしながらフッといなくなるような、そんなカッコいい人だよな、としまえんは。
『ブレーン』2020年11月号のインタビュー記事より抜粋)

としまえんを人に見立てて、
どんな挨拶をするかな?
と様々に想像する。
そんな思考の末に、出来上がったのが、
こちらの広告ビジュアルだ。

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最近の若い人はどこまで知っているか
分からないが、40代以上の年齢層で
あれば恐らく知らない人はいないで
あろう、『あしたのジョー』の主人公
矢吹丈。
力石徹との死闘も、ホセ・メンドーサ
との最終対決も、強烈なインパクトを
子ども心に植え付けられたのが懐かしく
思い出される。

この絵は、ホセとの最終対決後、
コーナーに下がった丈が
「燃え尽きたぜ・・真っ白にな・・」
というセリフを吐いた場面。
最強の相手に対して全力を出し切り、
やるだけのことはやった、燃え尽きる
までトコトンやった、そんな自分を
ねぎらうかのように、フッと微かな
笑みを浮かべている。

パッと見て、言いたいことが分かる。
言いたいことをぎゅうぎゅうに詰め
込んだところで、伝えたいことは
伝わらない。
そんな、「余白」の大切さが伝わって
くる作品である。

そして、これまた月並みな感想でしか
ないが、カッコいい広告だ。
「粋」という言葉がよりピッタリと
ハマるかもしれない。
94年間、やるだけやり切りました!
今まで応援してくれてありがとう!
そういうメッセージを、とても粋な
カタチで表現してくれている。

としまえんに行って思い出を作る
ことはもうできないけれど、
小さい頃の思い出に豊かな彩りを
加えてもらった、そんな気持ちに
させてくれるクリエイティブだ。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。