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小林製薬「ナイトミン」は売れるか

世の中には「マーケティング巧者」と
言える企業がいくつもあるが、
小林製薬はその筆頭に挙げられる中の
一つだ。

彼らは、とにかく消費者を観察すること
に長けており、消費者の抱えるお悩み、
課題、問題を、具体的にどうやって解決
するか、常に考えて考えて考え続け、
それを商品化していく力がすごい。

そして、課題とその解決方法を、徹底的に
分かりやすく商品名に取り入れつつ、
更に広告の中で提示する能力というのが
極めて優れている。
一部、薬機法(旧薬事法)の観点からは
「アウトではないか?!」と思われる
ほどに攻めているケースもあるが、
ここまで名の知られた一部上場企業である、
それなりに裏取りをして市場投入をして
いるはずだ。

ちょっとイヤな言い方をすれば、
「ベタ」な商品名であり、
「ベタ」な広告である。
しかし、ここまで「ベタ」なやり方に
こだわり、徹底しているのは、それが
明らかに効果的であり、消費者に刺さる
からだと受け止めている。

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これは、最近新聞で見かけた
「ナイトミン」という商品の広告。
いかにも、
ナイト=夜 → ド直球で、夜に
ミン=眠 → よく眠れるよ!
というニュアンスを感じさせる
ネーミングである。
更に、「ナイトミン」のすぐ横に
「安眠」という言葉をあしらい、
すぐ下には寝ている女性の写真を
載せて、どんな商品かということを
これでもかとアピールしている。

私自身、いびきがうるさいということで
家族から疎まれ、横向きに寝るように
努力したり、鼻呼吸を促すために一時期
絆創膏や医療用テープを口に貼りつけて
寝ていたことがある。
最近は、部屋を移ることによって
「騒音」問題は一旦解決したのだが、
いびきが収まったわけではなく、
寝ている間は知らぬ間に口呼吸に
なっている可能性が高い。
実際、起きたときにのどが渇いている
ときがあり、これは口呼吸が原因と
見ている。

そんなわけで、この広告に表現されて
いる「問題」に対しては、人並み以上に
自覚的ゆえ、つい気を取られたのだ。

口を閉じたまま寝るという解決策を
全うする上で、この商品が必須かと
いえば、答えは否だろう。
先に書いた通り、絆創膏や医療用テープ
で代用できるのを知っているのは私だけ
ではないだろうし、その方が間違いなく
単価が安いと気付く人も多いはず。
それでも、テープはいちいち切るのが
面倒とか、絆創膏だと粘着力に難が
あるというような人、あるいはその
ような代案を考えつかなかった人が、
お客様の候補となる。

では一体いくらなのだろう?
ということでAmazonで見ると、
15枚入りが700円程度する。
1枚あたり50円近い!
これはなかなか厳しい。
一晩使ったら翌朝すぐ捨てるしかない
代物に、この値段を払うには、
かなり説得力のある理由、
これでないと困るという独自性が
欲しいところ。

同様のベネフィットを提供する商品と
して、鼻孔を広げてあげるテープ、
ブリーズライトというのが以前から
存在する。
こちらもAmazonで確認すると、
なんと、ナイトミンと1枚あたり
単価があまり変わらない。

実は、ナイトミンの広告を見たときに、
このブリーズライトの市場を取るために
小林製薬が乗り出したのだろうと仮説を
持ったのだが、ほぼ同単価で勝てると
でも思ったのだろうか。
ブリーズライトは、鼻孔を広げることで
直接鼻の通りを良くするのに対し、
ナイトミンはあくまで口を閉じることで
間接的に鼻呼吸へと導く。
鼻詰まりの人にはおそらく使えない。

そんな認識があったので、きっと
ブリーズライトよりも1枚単価がグッと
安く抑えてあるだろうと思ったのである。
鼻呼吸の大切さを世に知らしめて
くれていることは素晴らしいが、
残念ながらヒットするには厳しい
状況だと見立てた次第である。

新商品開発は、「せんみつ」
つまり1000個出して、当たるのは
せいぜい3つと言われる世界。
あの小林製薬でも、大多数は失敗に
終わるわけなので、こういう商品も
「弘法も筆の誤り」よろしく、
たまにはあるのだ。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。