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予備校市場で「おこぼれ」に与かる戦略

大学受験予備校と聞くと、
私がすぐに思い浮かべるのは、
代ゼミ、駿台、河合塾の3校。
というと、何となく歳がバレる
かもしれない。

近年は、東進ハイスクールが
やたらと業績を伸ばして、
存在感を増している。
東大合格者数が日本一!
という宣伝文句が、あちこちで
イヤでも目に入ってくる。
東大だけでなく、ありとあらゆる
大学の合格実績で、圧倒的な数を
積み上げている印象だ。

東大合格というのに絞ると、
鉄緑会という名門塾がある。
東大を狙う中高一貫校の生徒という
非常に狭い層にターゲットを絞り込み、
極めて高いレベルの合格率を叩き出す
ことで、
「東大なら鉄緑会」
という確かな信頼、ブランド力を
築き上げている。
東進が「量」で勝負するのに対して、
「質」や「率」で勝負していると
言えるだろう。

そんな大学受験専門予備校の市場で
異色を放つ存在が、臨海セミナーと
いう横浜発の予備校がある。

この臨海セミナーの話をする前に、
そもそも論として、各予備校が
喧伝する大学合格実績の人数を
累計していくと、実際の合格者数の
何倍にもなるんじゃないか?!
という疑問を感じたことはない
だろうか?

これは大学予備校に限らず、
中学受験や高校受験の塾についても
言えることだが、複数の塾に所属
する生徒がいると、合格実績も
「水増し」された格好になるのは
分かるだろう。
テストを受けただけの「テスト生」
を含め、何らかの形で登録していた
生徒も実績に含めてしまう予備校や
塾が多数あるからこそ、「水増し」
された印象の数字が横行することに
なる。

ただ、実際にそれなりのメリットを
享受したのであれば、複数の予備校で
合格実績をカウントすることは、
不正とまでは言えないだろう。
そこを極めて徹底的に活用している
のが、臨海セミナーなのである。

彼らは、「東大プロジェクト」なる
システムを運用している。
そこでは、毎月のように模試を実施し、
模試終了後に実施する解説授業が終わる
や否や、添削答案を本人に返却すると
いう素晴らしいサービスを、独自の
ノウハウで築き上げている。
模試で場数を踏むというのは、
受験生にはとても大切なので、
そこに魅力を感じる生徒は多い。

この模試を、ある一定以上の成績で
クリアできる生徒は、何と無料、
あるいはほぼ無料に近いような価格で
提供しているというのだ。
中高一貫の名門校に通いながら、
他の大手予備校に通う生徒たちは、
これにつられて臨海セミナーに
足を運ぶ。
当然、そういう生徒たちが合格実績を
押し上げる、そういう算段である。

この仕組みはかなり人気のようで、
神奈川が地元であるにも関わらず、
合格実績で出て来る生徒の出身校に
関東でない学校の名前が多数出て来る
ようなのだ。
どうも、わざわざ地方巡業よろしく、
予備校の先生たちが地方のホテルに
出張って、そこで模試を行っている
というのである。

普通の在校生が金ヅル?となって、
優秀な特待生の分まで予備校に
お金を払っている構図だ、
と言えなくもない。
しかし、成績が良くなれば同様の
特待生的な恩恵を受けられるようで、
公平性は担保されている。

「レビューを書いてくれたら◯円オフ!」
という、楽天などに出店している
オンラインショップがよくやる販促に
構造が似ている。
受験生の喜びの笑顔とコメント付きの
名門大学合格実績を、受講料オフと
引き換えに得ているわけだ。

大手予備校と真正面からぶつからず、
共存できるような形でオリジナルの
ユニークなサービスを作り、
おこぼれに与かる戦略。
正に「戦いを略(はぶ)く」ことを
実現した、よく考えられた打ち手だ
と感心したのであった。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。