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注文分だけとる漁業

7月31日付の日経MJを引用する形で、
8月6日付の日経新聞(オンライン)に
タイトルと同名の記事が挙がっていた。

大量漁獲、大量水揚げを行い、
市場で大量に売りさばき、
末端の小売店に大量に供給する。
高度経済成長期のビジネスモデル
言い換えれば「マスマーケティング」
の仕組み
は、漁業においても幅を
利かせていた。

これを見直して、
注文があった分だけ漁獲することで、
必要な人に必要なだけ行き渡るような
仕組みを構築しているのである。

「受注漁」の名の下、岡山県玉野市の
漁業者である富永さんが始めたのは、
とてもシンプルな仕組み。
飲食店からは金額、個人客からは数量で
注文を受け、それに見合った分の魚を
獲って顧客に発送する

この「受注漁」を本格的に導入した
成果がすごい。
労働時間は従来の半分
売上は2倍に増えたのだ。
つまり、生産性が4倍に跳ね上がった
ということ。

お客様個々人のニーズに合わせて
商売を進めるやり方は、一時期
「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」
と呼ばれてもてはやされたことがある。

マス(一般大衆)を相手に商売する
「マスマーケティング」と対比される
概念
だ。
最近では、「パーソナライゼーション」
と呼ばれることの方が多いかもしれない。

「受注漁」は、正にこの
「ワン・トゥ・ワン」
「パーソナライゼーション」
に該当するやり方である。

以前は、このやり方をやりたくても、
コストが高すぎて難しかった。
まず、特定の顧客を見つけるのに
お金がかかる。
折角見つけたとしても、その顧客に
特別なオファーをカスタマイズする
のにまたお金がかかる。

それが、インターネットの登場で
環境が激変し、特定の顧客と、
特別なオファーをマッチングさせる
ための費用がどんどん逓減
していき、
どうにかコスト的に見合うような
状況になったのだ。

買ってもらえるかどうか分からない
分まで漁で獲り尽くし、
売れない分は安く売りさばくような
やり方よりも、
確実に売れる分だけを獲って、
お望み通りの商品を提供することで
高付加価値を実現する方が、
「三方よし」「四方よし」である。

記事でも、この「受注漁」が、
限りある資源の保護や、
高齢化する漁業者の人材確保など
にもつながるとして、その可能性を
評価している。

それにしても、生産性4倍とは素晴らしい。
日本の労働生産性の低さが指摘されて
久しいわけだが、ちょっとしたことで
簡単に上がる可能性があるのだと、
少し勇気をもらえた気がする。

以前に、堀江貴文さんが著書で紹介
していた、漁師が洋上で鮨屋の大将に
直接電話して取引を決める
、なんていう
事例を取り上げたこともある。

こんな風に、ダイナミックでかつ
無駄のないサプライチェーン

実現しているという事実が、
大変に興味深いところだ。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。