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パブリック・ナラティブ

一昨日、ナラティブという言葉を
投稿の中で紹介した。
日本語にすると「物語」、
ストーリーという言葉とどこが
違うのか、というような話を主に
書かせてもらっている。

結論だけ引用してしまうと、

「ストーリー」は、あくまでも
自己完結している一つの物語。
語り手や聞き手がその中身に
介在する余地がない。

他方、「ナラティブ」の方は、
語り手自身が紡いでいく物語、
まだ完結はしておらず、これから
どんな方向へでも発展していく
可能性がある物語、そんな
ニュアンスなのである。

ということになる。

この「ナラティブ」に関して、もう
半年ほど前になるのだが、講演を
聞いたことを思い出した。
タイトルに挙げた
「パブリック・ナラティブ」
という言葉を、リーダーシップに
関する講演の中でのキーワードと
して耳にしたのである。

語ってくれたのは、NPO法人の
副代表をされている方。
「コミュニティ・オーガナイジング」
(Community Organizing、以下CO)
という、アメリカで20世紀初頭には
既に生まれていたコンセプトで、
「ジャパン」を設立したのが2013年
の11月というから、既に6年以上活動
を継続している模様。

オバマ前大統領は、卓越した演説能力で
注目されたが、その由来が実はこの
CO活動にあったのだという。

「コミュニティ」=地域社会・集団
「オーガナイジング」=組織すること
というような意味合いなので、
要は、地域における小さな集団を
いかに組織としてまとめ、運営して
いくかに関する方法論。
そのNPOのサイトにある言葉を
そのまま借りると、
「市民の力で自分たちの社会を変えて
いくための方法であり考え方」

となる。

コロナ騒動の有無に関わらず、
現代社会は先行きが不透明、
その中で、社会を少しでも良くして
行こうと思ったら、極めて強力な
リーダーシップが必要となることは
容易に想像がつく。

そのときに必要なリーダーシップの
要素を5つほど挙げ、それらがCOの
構成要素だとのことで、そのうちの
最初の1つが、
「パブリック・ナラティブ」
だということらしい。

彼らのサイトに、その説明が簡潔に
まとまっているが、私なりにより分かり
やすくするとこんな感じである。

人が動けば、必ずストーリーが生まれる。
その、「自分自身」のストーリーを語る。
動いた理由、そこに熱い「Why」があれば、
そのストーリーは共感を呼ぶ。

やがてそのストーリーは、共感の輪を広げて
「私たち」のストーリーへと変化し、
コミュニティとしての一体感を生む。

更に、「いま」行動を起こす必然性を語る
ことで、共に行動する仲間を増やす。

これらの要素が一体となって、
人の心を動かす物語が紡がれていく。

このことを、彼らのサイトにある図が
端的に表現してくれているので、
ちょっと拝借させてもらったのがこちら。

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やはり、「パブリック・ナラティブ」で
用いられる「ナラティブ」という語の
意味も、まだ完結していない、これから
更に紡がれ、発展していく「物語」と
いうニュアンスであった。

図には、「ストーリー」の語も使われて
おり、どこまで意識的に使い分けされて
いるかは定かではない。
しかし、個々の円は「ストーリー」だが、
3つの相互作用で紡がれていくものは
「ナラティブ」だ、という解釈が成立
するようにも見受けられる。

これからは「ナラティブ」の時代。
「ストーリー」を超越して、
「ナラティブ」でリーダーシップを
発揮していく時代なのだ。

とはいえ、、、少々蛇足をば。
一橋大学の楠木建教授が書いた、
経営書として異例の大ベストセラー、
『ストーリーとしての競争戦略』が、
もし
『ナラティブとしての競争戦略』
だったら、、、
まだまだ日本人には耳馴染みのない
単語にとどまっているゆえ、
きっと大して売れなかっただろう。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。