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過保護に育ったモモ

五回目となる、竹下大学さんの新著
『日本の果物はすごい』のご紹介。
マーケティング的に興味深い話
ピックアップして紹介するシリーズ、
そろそろ最後にしようかと思って
おります。

今日は、第6章「モモ」について
見ていきましょう。

モモと聞いてサッと思い浮かべる
あの大きくて丸い果物は、実は
ここ200年くらいの浅い歴史しか
ないということ、ご存知の方は
いらっしゃるのでしょうか?

勝手な推測ですが、ほとんどの方は
知らないのではないかと思うのです。

昔は、スモモくらいの小さな果実が
なるのみ
で、大きくて甘いモモと
いうのは本当にごく最近の品種改良
によるものらしいのですね。

そういった品種改良による恩恵を、
我々は知らずしらずのうちに
ふんだんに受け取っているわけです。

そんなモモに関するエピソードの
中で、私が一番心に残ったもの、
それは、著者の竹下さんも「仰天」
したという以下の事実です。

モモの木は管理をしないと2年で枯れるんです。ウメぐらいの大きさの実をびっちりならせて、そのまま枯れちゃう。枯らそうとしなくても、元々はそんなにも沢山の実をつける植物ではなかったからなんでしょうかね。栽培しているモモは、摘らい、摘花、摘果と人間が余計な実をつけないようにしていますから。

『日本の果物はすごい』298-299頁

一言で言えば、現代のモモは
「超・過保護」が特徴だと言えるのでは
ないでしょうか。

「摘らい、摘花、摘果」とある通り、
つぼみを摘み、花を摘み、果実も摘んで
数を絞り込むことで、一つひとつの
果実があそこまで大きくジューシーに
仕上がるということなのでしょう。

そして、過保護に慣れてしまうと、
その保護がなくなったとたんに
生き残る力を失ってしまう
・・・

「獅子は子を谷に突き落とす」
言いますが、モモの場合はその真逆
であると評することができそうです。

公的機関からの補助金などに頼って
いる業種・業界・会社
は、
それらに頼っていることによって
足腰が弱り、厳しい競争に晒されて
いる業種・業界・会社に比べて
市場で生き残っていく力に乏しい

ことは、多くの人が感じている事実
ではないでしょうか。

モモが直面している現実から、
そんな連想を働かせることなど
思いもよらぬことでした。


モモの章を読み終えると、
「おわりに」が2ページほど続きます。
そこに書かれた、竹下さんの思いに
触れて、改めてジーンとしたので、
ここに引用して終わりたいと思います。

特に若い世代の果物離れは著しい。菓子やスイーツの方が果物よりもおいしくて割安だという印象を与えてしまっているせいだ。果物だっておいしく改良されてきてはいる。だが、もはや味で勝負しても勝ち目は薄い果物ならではの魅力を伝えるとすれば、生き物である植物の果実だという事実と果物ならではの物語、だと私は信じている。そのためのひとつの切り口が「果物×歴史」のかけ算、すなわち本書のコンセプトというわけだ。

『日本の果物はすごい』302頁

物語は、確実に人を動かします。
紡がれてきた歴史の中で、様々に活躍を
した果物たちの、数々の物語。
これらが、我々現代人の心を突き動かし、
果物にスポットライトがより多く当たる
ことを強く願ってやみません。



己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。