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シン・新・真・心・信・芯

『シン・ゴジラ』
『シン・ヱヴァンゲリヲン』
『シン・ウルトラマン』
『シン・仮面ライダー』


いずれも、言わずと知れた
庵野秀明監督作品のタイトルである。
後者二つは制作中、今年と来年に
順次公開予定で、早くからネットで
盛り上がりを見せている。

なぜ「シン」なのか?
」と「」を兼ねている?
」や「」なども含むのでは?
色々な憶測もありつつ、公式には
『シン・ゴジラ』の際に

「新」、「真」、「神」などの様々な意味を感じてもらいたいという意図を込めて付けられたもの

という監督の発言があったようだ。

この「シン」人気にあやかって付けたか
どうかは知らないが、ビジネス書では
安宅和人さんの『シン・ニホン』
「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」
で総合グランプリ
に選出された。

そして、もう一つの「シン」と付く
書籍が今年になって発売された。
あのマキャベリの『君主論』を下敷きに、
これからのリーダーのための教科書と
題して書かれたこちらである。

今や日本を代表するコンサルティング会社
と言える「経営共創基盤(IGPI)」
創業者でありグループ会長の冨山和彦さんと、
同社で共同経営者マネージングディレクターを
務める木村尚敬さんとの共著。
お二人ともベストセラーを連発し、
脂の乗り切ったプロフェッショナルだ。

タイトルになぜ「シン」を付けたのか、
実は、本書のどこを読んでもその理由は
書かれていない。
うがった見方をすれば、巷で話題になって
いる『シン・ニホン』や、庵野監督作品の
「おこぼれ」的な認知並びに関心を獲得
したいということだろう。
書籍のタイトルは、著者よりも出版社や
編集者が決めることが多いとも聞くので、
「売れる本」にするためのテクニックと
して、日経BP社が先導した可能性も高い
のではないかと見ている。

それでもあえて、「シン」と付けた意味を
本書に見い出すことにこだわって、勝手
レビューをさせていただこう。

マキャベリの『君主論』と言えば、
古典中の古典、名著中の名著と言って
差し支えないだろう。
翻訳本や解説本も多数出ており、
最近ではマンガもある。

『シン・君主論』における引用は、
こちらの講談社学術文庫版を使って
いるとある。
岩波は訳が原文に忠実らしいが、
その分少しとっつきにくそうだ。
講談社や中公文庫の方が読みやすい
訳文となっているように感じる。

そんな古典的名著を、「温故知
的に読み解くという意味で、
・君主論」という側面がある。
何故、君主たる者が冷徹でなければ
ならないのか。
今、この令和における日本で、CXを
推進するリーダーを君主になぞらえて、
マキャベリズムの必要性と重要性を
切々と説いてくれる。

更に、「・君主論」という側面も
指摘できる。
君主=リーダーというのは孤独だ。
これはよく指摘されることだが、
実際にその立場を経験しないことには
なかなか分からないもの。
コンサルティング会社で、に孤独な
経営者に数多く寄り添ってきた著者の
解説だからこそ、マキャベリの主張を
引きながらの言葉に実味や重みが
感じられる。

ここからは少し言葉遊びだが、
・君主論」という捉え方もまた
可能だ。
人間理への深い洞察から生まれた
マキャベリの言葉の数々は、
いかにリーダーがフォロワーの
掌握するかに際して、具体的な指針を
与えてくれる。
それを、現代の我々がより適用しやすい
よう、アレンジを加えてくれているのが
本書だと考えてよい。

・君主論」という側面もある。
リーダーは「念」を明らかにすべき
であり、それをことあるごとに共有し、
チームに徹底してこそ、マネジメントが
可能となる。
この「念」だったり、「用」「義」
頼」といったキーワードの大切さも
また本書で多く語られるところだ。
マキャベリは、冷酷、冷徹一辺倒という
イメージが強いが、こうした温かみもまた
君主には必要だと説いていることを忘れて
はなるまい。

最後にもう一つ、「・君主論」という
捉え方をしても良いのではないか。
実際のところ、この「」という言葉は
本書で一字たりとも使われてはいない。
しかし、君主=リーダーとして、
判断や行動に「ブレ」を生じさせては
ならない、という趣旨の主張は何度も
出てくる。
これは、自分の軸、言い換えれば「」を
しっかりと保ち、ブレたりズレたりする
ことなく、一本貫き通せ!ということ。
こじつけかもしれないが、その意味で
「シン」=「」という解釈もできると
考えたのである。

リーダーへのヒントが盛り沢山。
既にかなり良い売れ行き(木村さん談)
というのも納得の本。
オススメである。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。