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「文化の移植でしょ? 残念な」 開業医のひとりごと 秋山一誠 2021年12月号

#開業医のひとりごと
#月刊ピンドラーマ  2021年12月号 HPはこちら
#秋山一誠 (あきやまかずせい) 文

ひとりごと[1]

 さてまた今年もやって来ました、年末です。当地ブラジルで年末と言えば、クリスマス一色になり、カトリックが主流の国なので当たり前といえば当たり前なのです。クリスマスはキリスト教の中心人物、イエスキリストの誕生を祝う祭典です。いうまでもなく、元々キリスト教徒が行っていたモノですが、近年ではまったく関係のない日本などでもクリスマスを有り難がってお祝い事と考えている人が増えているのではないかと思います。まあこれは宗教的内容はともあれ、親しい人達が集まって、普段からかけ離れたご馳走を食べ、懇親するのが主な目的だと思われますので、それはそれで良いことだと言えるのではないでしょうか?

『元々この12月25日前後は欧州の古代文化では冬至を祝う時期であったのが、キリスト教が普及するにつれ、そのお祝い事をイエスキリストの誕生祝いに置き換えたとされている。なので、ある意味原点に還っていると言えるのかもしれない』

 そこで、クリスマスの食事を日伯の違いでみてみると面白いです。元からキリスト教と関係のない日本(註1)のクリスマスメニューをみていると、なんか訳のわからない折衷メニューや「子どもが喜ぶメニュー」など、元の文化となんら関連性がないことがわかります。ネットで調べると、クリスマスの食事のメニューランキングがあり、次の内容がトップに登場するそうです:

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 これら以外に寿司(にぎりや手巻き)、パエリアなども人気があるみたいです。ピザやフライドチキンなど、ご馳走であるとは言えないですが、多人数で集まって食事するのが目的なのでしょう。寿司もその延長ですね。

 反面、ブラジルのクリスマスメニューは伝統的で一貫性があります。

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 このメニューの伝統性・一貫性は、すべて「ヨーロッパの冬」のご馳走であることだと言えます。それもそのはず、まさに冬至の食事なのです。日本にいると、その時期雪が降ったりもするのでそんなに違和感がないと思いますが、ブラジルでは反対の夏至なので雪景色のクリスマスデコレーションや防寒服を着たサンタさんはいかがなものでしょうか?これらを見ていると、明らかに植民地に輸入された文化であり、当地の事情・気候・旬とはまったく関係のない祭典であることがわかります。

『食事の内容は、カロリーの高い、寒さが厳しい冬の食べ物だな。当地では夏の始まりで、暑くって、海にでも行こうといった時期にどうしてこんな暑苦しい食事をしないといけないのだ?宗教がらみなの縁起物なので、そんなものだと言ってしまえば終わりだけど…』

 日本でも「土用のうなぎ」といって、極暑にスタミナがつくものを食べるといった習慣もありますが、それにしてもこのメニューではカロリーオーバーでしょ。若干ブラジルで発展した内容もありますが、それもヘビーなサラダですね。このコラムの24人の読者様もブラジルのクリスマスの食事の経験がある方も多いと思いますが、翌日胸焼けしませんか?東洋医学の考え方で、食事で最も重要なのは「旬の物を楽しむこと」ですが、このメニューはそれを完璧に無視した「とんでも料理」だと筆者は思います。

『当地でも日本でも、クリスマスの輸入文化だけでは事足らず、最近は「ハロウィーン」も輸入されている。人が集まって楽しんだり、食事で懇談するのは良いことだと思うけど、特定の民族・宗教団体・文化などのイベントを単なる商業的目的で普及させるのはどうか。それにのせられているのはもっと残念で悲しいぞ』

 今年の年末はコロナ禍も落ち着いているので、例年の様にみんな沢山集まるのでしょうね。25日の朝にはあちこちで大破した車を見かけます。大量に飲酒するので、24日の深夜の運転は非常に危険です。ご注意ください。

註1:日本には昔は切支丹、現在はキリスト教徒がおられますが、日本人の主流ではないのでこの様な表現とします。


秋山 一誠 (あきやまかずせい)
サンパウロで開業(一般内科、漢方内科、予防医学科)。
この連載に関するお問い合わせ、ご意見は hitorigoto@kazusei.med.br までどうぞ。
診療所のホームページ www.akiyama.med.br では過去の「開業医のひとりごと」を閲覧いただけます。


月刊ピンドラーマ2021年12月号
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