「その体調不良、悩んでないで相談しましょう 」 開業医のひとりごと 秋山一誠 2021年11月号
#開業医のひとりごと
#月刊ピンドラーマ 2021年11月号 HPはこちら
#秋山一誠 (あきやまかずせい) 文
またコロナの話です…。ずっとコロナに関する話題をほとんど毎月提供してきました。今月は新型コロナウイルス感染症の後遺症や感染症に関連する疾病についてひとりごとさせていただきます。もうコロナ禍は飽き飽きですね。現時点でまだまだ世界的にワクチンが行き届いたとは言えませんが、我々の生活圏ではワクチン接種政策が功を奏してきています。外出制限やマスク使用などが解除された国も多くあり、当地サンパウロや日本でもいろんな規制が緩和され、「さあ出かけるぞお、飲み屋行くぞお」状態になっています。
『この原稿を執筆している直前の土曜日の夜、サンパウロ市内を車で移動していたのだが、飲み屋、クラブなどが大繁盛していた。スゴイ人出! まあこの“飲み屋行くぞお”もコロナ関連の疾病とも言えるのでは? ワクチンの接種率が増えた、コロナ死者が減ったとは言え、サンパウロ市ではまだ自宅内以外ではマスク使用義務が適用されているし、飲み屋やイベント規制を解除した場所(国)では感染者が増えている事実があるのだが、「自分は大丈夫、もう大丈夫」と判断して出かけているのだな。これは「確証バイアス(註1)のコロナ拡大版」と言えるだろう。一種の精神疾患?』
コロナ禍も間もなく2年になろうとしており、最近は各所で「新型コロナウイルス感染症後遺症外来」が設置されています。この後遺症はまだ確定した定義が認知されていないのですが、概ねコロナ感染から4週間以上経過しても表1のような症状が続く場合、後遺症と考えられます。
<新型コロナウイルス感染症の後遺症で現れる症状>
咳、倦怠感、味覚嗅覚異常、脱毛、睡眠障害、動悸、関節痛・筋肉痛、食欲不振、呼吸困難、思考力・集中力の低下、下痢、頭痛、発熱、立ちくらみ、うつ・不安、胸焼け
これらは、コロナ関連の報道でもよく取り上げられているので、このコラムの24人の読者様も周知されていると思います。新型コロナウイルス感染症は基本的には「免疫系統かつ、循環器系統を侵す疾患」なので、全身のどこにでも症状が出てもおかしくないわけです。表1をみてみると、器質的疾患(身体の不調、例:下痢、発熱)と心理的疾患(心の不調、例:思考力の低下、不安)に分類することができます。これらは実際感染症を発症した人の経過です。だから「後遺症」なのです。ブラジルだけで、COVID-19と認可された人口は現時点で2千2百万人弱、全人口の約一割です。つまり、後遺症そのものは当国の場合、この一割に起こりうる状況です。残り九割は感染が確認されていないわけです。しかし、発症した人と同じようにコロナ禍に曝されているので、いろんな体調不良が認知されるようになっています。ストレスのたまる外出規制、人との接触制限、慣れないリモートワーク、ステイホームに伴う家族のありかたやもめごと、不安が積もり続ける経済状態、見通しが不透明な仕事や学業などなど、健康を脅かす状況がてんこ盛りです。
後遺症の他にもよく取り上げられるのがコロナ禍による「健康二次被害」です。これはステイホーム(外出控えや医療受診控え)や人との関わりが減ることで引き起こされます。この状況は免疫機能を低下させることがわかっており、免疫が関連する疾病の発症や悪化が考えられます。社会生活で一番怖いのは高齢者の筋力低下や認知機能の低下です。さらに一番多いのは間違いなくストレスによる心の不調でしょう(註2)。ステイホームでは飲酒の増加や運動不足のため肥満や生活習慣病の悪化が関係しています。ということで、「ステイホーム(家にいろ)」とともに、「ステイアクティブ(活動しろ)」と「ステイヘルシー(健康でいろ)」の二つのステイも提言されています。
さらに最近、「新現代病」と呼ばれる身体の不調もでてきています。長引くコロナ禍によるもので、誰に現れてもおかしくない状況です。次の表に“病名”と“筆者のコメント”を記します。
<新現代病の病名と筆者のコメント>
マスク皮膚炎:これは説明不要でしょ。マスク使用しなかったらおこらない。
マスク依存症:マスクがないと落ち着かない、他人がマスクしてないと不安といった状態。
スマホ肘:肘をついてスマホを長時間使用してるからだな。
手洗い強迫性障害:手洗いに過度に過敏になり、元々強迫性障害の傾向があったら、強度に発症するのでは。
ふれあい拒否症候群:コロナのため、他人との接触恐怖だな。
デジタル時差ボケ:これもスマホなどデジタル環境と関連。深夜にスマホやパソコンをいじり、朝時差ボケする。
デジタル認知症:世の中デジタル化が進み、自身の思考力が低下するのだ。以前からあったが、コロナ禍で顕著に?
子ども腰痛:コロナ禍のための運動不足が主な原因。
ドケルバン病(註3):スマホの使いすぎだな。
急性内斜視:これもスマホの使いすぎ、パソコンなどの画面を見る時間が長いなどが原因。
ドライアイ:急性内斜視と同じ原因。
近視:急性内斜視と同じ原因。
突発性難聴:ストレスで緊張し、歯ぎしりや食いしばりが原因となることが多いようだな。
歯痛:歯ぎしりや食いしばりのため。
頭痛:マスクを使用することで引き起こされるマスク頭痛と呼ばれるモノもある。一番危ないのはマスクのため酸素不足になる事態。よくあるのはマスクの紐がきついためおこるモノ。マスク頭痛以外では緊張で肩や側頭筋がこる事態がほとんど。
このような症状がコロナ禍と関係している可能性があります。居酒屋に行けるまで社会活動が回復してきていますので、医療機関へも行けます。体調不良の方は悩んでいないで受診しましょう。
『ちなみに、秋山一誠診療所ではスタッフ全員(といっても3人だけですが)コロナワクチン2回接種済です。安心してご来院いただけます。』
註1:確証バイアスとは自分が信じていることを裏付ける情報だけを探し、自分に不都合な情報を無視する傾向のことを表す心理学で使用される用語。
註2:コロナ禍の精神的問題は今年の8月号(“コロナ禍で頭の中がグチャグチャです。”)でひとりごとしていますので合わせてご覧ください。
註3:狭窄性腱鞘炎。手の親指を外側に動かす腱の腱鞘炎。
秋山 一誠 (あきやまかずせい)
サンパウロで開業(一般内科、漢方内科、予防医学科)。
この連載に関するお問い合わせ、ご意見は hitorigoto@kazusei.med.br までどうぞ。
診療所のホームページ www.akiyama.med.br では過去の「開業医のひとりごと」を閲覧いただけます。
月刊ピンドラーマ2021年11月号
(写真をクリック)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?