実録会話:コロナ禍なにわ親娘 開業医のひとりごと 秋山一誠 2021年7月号
#開業医のひとりごと
#月刊ピンドラーマ 2021年7月号 HPはこちら
#秋山一誠 (あきやまかずせい) 文
その一 出かける
コロナと言うようになっても娘は学校やお友達とのお出かけになり、毎日、毎日、ママは言います。
母「マスクしてる?予備の持ってるのん?手にはバイキンマンがいるからアルコールで消毒してから口鼻目をさわらないようにするようにしいや。密をさけてね。人が触ったものにはバイキンマンやからね。アルコール持参やで。ほら、持たされた石けんで手を洗って。トイレもたくさんの人が使ってるから、先に手を洗ってね、トイレ済んでからもちゃんと手を洗うんやで。自分のハンカチで手え拭きや。外食する時もそこらを拭くんや、持ってるアルコールタオルで。お願いやで」
娘「毎日同じことを言うてるけど、そないに細かなことを言うママは世の中いてへんわ!!“あんたのママ過保護やと思うー!”って友達からバカにされてるんやけど、我慢して出かけてるんやけど、毎回そないに言うてたら念仏唱えてるような人と同じって思わへんのかいなあ!」
と言って娘は出かけていきます。
その二 帰ってくる
お嬢が帰って来たらママは言います。
母「玄関でアルコール消毒して。マスクは玄関に置いてあるゴミ箱に捨てて。入り口で洗濯する服を脱いで。服を洗濯機に入れて。洗面所で手洗いうがいして。お風呂に入るんやで。その間にもね、この家にいる人のことを考えるの。どうしたらコロナうつさんか」
それで、お風呂あがったら
母「毎日の行動を報告して、買って来たモンには消毒するんやで」
寝る前には
母「うがい歯磨きをして。漢方薬飲んで。体調が少しおかしいと思ったらすぐに熱を測るんやからねえ」
娘「帰って来てもやらなあかんことだらけやし、おまけに、行動を報告するのどこに行った、誰と一緒やったってママに報告するの面倒くさいし。言いたいことと言いたくないこととあるんや。そんなん聞いてどうにかなるんかなあ。“お土産はコロナちゃうんやで”って言うけど、持って帰りたくないんや。そんなもん気ぃつけてるんやけど。フェイスマスクまでママに持たされて、電車でしてたら“ハアー?”って目で見られてるんやしぃ。このおかん何考えたらこんな風になるんや…」
と毎回娘はこういうふうに言います。
その三 ステイホーム
家にいる時は今度は
母「換気してや。掃除もしてや。タオルなどは自分だけで使用やで。トイレは2階のを使ってねえ。学校はリモートでも行ってもどっちでも良いって言うからリモートにしようね。食事はバランスの良い食事を摂るように考えてるから、ご飯は朝作っておいたのにしてや。フルーツヨーグルトにしといたから、ちゃんと腸に良いヨーグルトとるんやで。家でいる時は少しでも気分転換するのが大事やから、夕方に散歩したり、買い物に行ったり、自分で楽しみを考えてや。一番大事な事は免疫力つけとくことやから、睡眠時間をきっちりとって、なんでも無理しないようにねえ。それから、おじいおばあのお家行く時は2週間考えてね、絶対に守ってや」
と娘に言い聞かせました。
娘「ママ仕事に行ってるから、いない時は自由にさせてもらってるんやけど。ママ帰ってくる時間に掃除とかしてたら今頃してるぅって、時間いっぱいあるんちゃうの?って目で見るやん。やってくれてありがとうちゃうの? コロナになって納得できるところあるけどママの性格直していった方が今後のためやと思うところあるねええ。気をつけて生きていかなあかんでえー」
と娘はコロナ禍で母の人生の方向を見いだすのでした。
『コロナ禍も1年半経過し、ワクチン接種が始まったものの、全人類に到達するのはほど遠いです。この実録会話はまだまだ続きそうです。このコラムの24人の読者様はワクチン接種済まされている方もおられると思いますが、現時点ではそれで以前の生活に戻るわけではありません。引き続き注意深く生きてくださるようお願いします(註1)』
註1:会話と全然関係ないですが、このコラムを執筆中に東京の上野動物園でパンダが2頭生まれました。筆者からの赤ちゃんパンダの名前の提案:アンシン(安心)とアンゼン(安全)。
診療所のホームページにブラジル・サンパウロの現状をコメントした文章を記載してますので、併せてご覧いただければ幸いです。
秋山 一誠 (あきやまかずせい)
サンパウロで開業(一般内科、漢方内科、予防医学科)。この連載に関するお問い合わせ、ご意見は hitorigoto@kazusei.med.br までどうぞ。診療所のホームページ www.akiyama.med.br では過去の「開業医のひとりごと」を閲覧いただけます。
月刊ピンドラーマ2021年7月号
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