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カネリーニャ Canelinha ブラジル緑の歳時記 第97回 田中規子 月刊ピンドラーマ2021年2月号

#ブラジル緑の歳時記
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#田中規子(たなかのりこ) 写真・文

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 この土地に初めて栗を植えて今年で8年目、ここへ引っ越してきて4回目の栗収穫期になった。徐々に土地を開いては栗を植えて、3年前に栗の苗を植えたところにはカネリーニャという大西洋岸林の在来種の大きな木が3本残されている。もとの持ち主は養鶏をしていた農家で、鶏舎跡には2次林が生い茂っていた。そこに栗を植えるため新たに開こうとしたところ立派なカネリーニャがあって、それは残した方が良いというのでそうした。いま、カネリーニャの実がたくさん生る時期で、朝夕にはたくさんの野鳥がやってきて実をついばんでいる。
 カネリーニャは葉がシナモンのような良い香りがすることからそう名付けられた。葉を揉んでみるとなるほど良い匂いではあるが、シナモンかな?と感じるのが正直な感想である。うちのカネリーニャはあまり樹勢が美しいわけではないが、一般的には樹勢が丸く美しく、根がはびこらずまっすぐ伸びることから、1950年代ごろサンパウロ州の地方やパラナ州で街路樹として植えられることが多かった。樹高はおよそ15m~25mになり、幹は直径60㎝までなので、そう大木にもならないのが街路樹には好都合でもある。サンパウロ市内ではブエノスアイレス公園に樹齢100年以上の木がいくつかあり、ヴィラ・オリンピア地区にも街路樹として利用され、市内の排気ガスにも耐え公害にも強いとか。
花は6月から9月に白い花が咲き、結実は11月から1月にかけてである。実は緑色のどんぐりほどの大きさで、どんぐりのように帽子をかぶったような実を付けている。サルや野鳥が実を大変好み、夕方この木を見に行くとサビアやサニャッソなどサンパウロ市内でもよく見かける鳥が群がり、時にはトゥッカーノも見られることがある。この街路樹に野鳥が来るのも一つの魅力だろう。

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 木材としては硬く材質が良いとされており、家の窓枠や梁に使われている。ただ葉と違って材木は湿ると臭いとか。カネリーニャが家の建築材として使われている例としては、ブタンタンにあるカーザ・バンデイリスタ(要確認)という18世紀前半に作られた当時の農園主の家にある。タイパという厚さ50㎝、高さ5mにもなる泥壁の家で、当時のいわゆる有力者の家の一般的な建築様式だった。パウ・ブラジルなどのブラジルからポルトガルに輸送する高級材以外の木材で、大西洋岸林の在来種のなかでも建築材として有用だったのがカネリーニャだったのだろう。カーザ・バンデイリスタにも豊富に使われており、床材に使われている。当時はカネリーニャ含め多くの在来樹種が豊富にサンパウロにあったことが伺える。なおこの建築物は当時の建築様式を後世に伝えるため保存されている。
 ところで、農場では春に拾ったサニャッソの雛が成鳥になって巣立ちを待っている。いかにも飛び立ちたがっているのが良くわかる。サっちゃん(サニャッソ:学名Tangara Sayaca)の巣立ちは少し寂しいけれど、このカネリーニャの傍に放てばたくさんの仲間に会えるだろう。


月刊ピンドラーマ2021年2月号
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