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ピン留めの惑星|全アーカイブ

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いつのまにか失くしてしまった“たいせつなもの”たちが辿り着くどこかの星のだれかの物語―。  ◉《大島智衣の読みもの》と《つきはなこの漫画》との週替り交代+おまけ付きでお送りするシ… もっと読む
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#恋愛

口実

(*本編は最後まで無料でお読みいただけます) ○映画館のレイトショー/夜 割と混んでいる上映中の映画館の場内。 客席の最前列、いちばん端っこの二席に並んで座り、スクリーンを見上げている男女。 ふたりの頬がスクリーンに反射した光で明るくなったり暗くなったり。 ひじ掛けに置かれた男の手を見る女からの視線。 女の手は膝の上のバッグをかたく抱きしめている。 ○刀削麺屋/同日夜 中国語が飛び交う刀削麺屋のカウンターで麺をすする男女。 男 うまいね。 女 そうここ、うまいん

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受粉

*本編すべて無料でお読みいただけます 村上くんに彼女がいることを知ったのは、ふたりとも早番上がりで「軽く飲んでく?」と寄った先のバルのカウンターで、どの動画配信サービスを契約しているかをお互いに言い合っていたときで、村上くんが「僕はアマゾンプライムと、Huluと……あとNetflix。や、Netflixは彼女のか」と言ったそのときだった。 なんだ彼女いるのか。 口には出さなかったけど、それに、全くそこには食いついたりしないでスルーしたし、なんにも気にしていないフリをした

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あなたの視線(後編2ー最終話ー)

前回のお話はこちら ーfinー ・゚・。。 ・おまけ付録。。・゚・。・゚ 全4回に渡ったつきさんの作品『あなたの視線』……回を重ねるごとに、物語への愛着って増すものですね。最終話を迎えるのが惜しかった読者のうちの一人、大島です。こんばんは。 今回のおまけは、そんな『あなたの視線』の印象的だったフレーズを、いつまでも心に留めておくべく、そして読まれた方々とその想いを分かち合うべく、思うままに感想を綴っていきたいと思います。 よければあとで、あなたの感想も聞かせてくださ

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「1112324493」

*本文すべて無料で読めます 藤野君がなんでウチに来たのかはおぼえていない。 なんでだか藤野君は、大学を卒業したあとも住みつづけた早稲田の私の部屋を訪れてひと晩だけ泊まっていった。しかも風邪を引いて具合が悪いとかで、来て早々にひとの布団で寝込んだ。 だから、私が記憶しているウチに来た藤野君の姿は、私が敷いた布団にすっかりとくるまって、掛け布団を乱すことなく綺麗にじっと寝込んでいる姿だった。 なんだったのか。 藤野君についてはわからないことが多い。 私はたしか、あの頃藤

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strawberry candy

信号待ちをしていると となりの親子連れの小さな女の子が 「青にな〜あれ! 青にな〜あれ!」 と 赤信号に向かってしきりに大きな声でさけんでいた 「こうやってると 青になるんだよ」 彼女は得意げに 嬉しそうに 母親にそう教えてあげていた そうなのか 赤信号はそうやって 青信号に変わるものだったのか──── 小さな女の子は その〈魔法の呪文〉を 懸命に 願いを込めて 唱え続けていた 私は 青になってほしく なかった 願えば届くなら ずっと赤信号のままでいて

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絶対になくならないピン留めと恋

もうだいぶ遅い時間のバスでの帰り道。 左ななめ後ろの座席から、お互いに気恥ずかしそうに恐縮し合う男女の会話が聞こえてきた。 「迷惑かなと思ったんですけど。いつも次で降りてるなと思って」 「いえいえ、ありがとうございます。助かりました」 どうやら、たまたま隣の席に座っていた女性がいつも自分と同じ停留所で降りることを知っていた青年が、次はもう自分たちが降りる停留所だというのに彼女が気づかずこんこんと眠り続けているのを「このままでは乗り過ごしてしまう!」と意を決して声を掛け、起

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悪魔沸く

ーfinー ・。。・゚・。。 購読特典・。。・゚・。。 今回の特典は、恋する乙女を悪魔に変えるヒドい過去の恋愛体験をつづった大島智衣の“半分懺悔”エッセイをどうぞ。 魔女をつくる男たち/文・大島智衣 ある男の子をめぐって三角関係になったことがある。

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私が触わっていい人

週末だけ手伝いに行く小さなワインバルのオーナーの三上さんには、もうずっと長いこと付き合っているカノジョさんがいる。 結婚はまだだけど、三上さんの左手の薬指にはいつも指輪が光っていて。日ごとどんなに彼に惹かれようとも、見えないバリアで私は決して三上さんには近づけない。今以上には1ミリも。 だけど───ぬか床をかき混ぜるときにだけ、彼は指輪を外す。 そのとき、そのあいだくらいは、三上さんとの恋を想像するくらいは許されるんじゃ、ないかな? ……そう思って、さりげなく彼を眺め

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彼が席を立った隙にリップを塗りなおした。恋をしている。

「ひさしぶりに仕事でこっちに来てるんだけど、終わったらメシでもどうでしょう」 彼からのメッセージが届いたスマホの画面を思わずスクショしたくなる。 「どうでしょう」って、行きたいです。 半年前に仕事の現場で一緒になったとき、好感ばかりが募った彼とのメシだ。返信をしながら、心に決めた。 今日は新しいリップを買おう。 ポケットに入れて持ち歩いているリップというのは、たいていいつの間にかどこかに失くしてしまう。ハンカチを取り出すときなんかに、ふいに落としてしまっているのかも

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