電車広告の基本。書籍や雑誌の宣伝費用と広告効果はどれくらいなのか?
本をたくさん売るためには、いろいろな方法を試さなければいけません。
書店では本の陳列方法を変えたり、手書きのPOPを作成したり。
今ではSNSが普及しているので、出版社が自社のFacebookやTwitterを使ってPRすることも多いですね。
そんな数ある販促手法の中で特に広告効果が高いと言われているのが、「電車広告」です。
なぜ本の電車広告は高い効果が見込めるのでしょうか?
今回は電車広告の種類と、それぞれの費用対効果についてわかりやすく解説します。
中吊りだけじゃない!電車広告の種類はこんなにある
はじめに、電車広告の種類について整理してみましょう。
電車広告とひとくちに言っても、その種類は様々です。
中吊りポスター
まど上ポスター
ドア横ポスター
ステッカー
デジタルサイネージ
つり革広告
女性専用車両広告
広告貸切電車
電車車体広告
と、こんな風に書きましたが少しややこしいので、それぞれの広告について以下のとおり区別しておきましょう。
【中吊りポスター】
電車の通路頭上に吊るされる広告。週刊誌(週刊新潮や週刊文春)の広告などが多い
【まど上ポスター】
電車内の網棚の上に貼られるタイプの広告
【ドア横ポスター】
ドアの横(座席の一番端壁面)に貼られるポスターのこと
【ステッカー広告】
ドアやドア横ポスターの近くに貼られる、小さめの広告
【デジタルサイネージ】
電子看板。電車内の液晶画面で流される広告
【広告貸切電車】
1つの広告で電車内の広告をすべて統一させる広告
【電車車体広告】
電車の車体に打つ広告
電車広告にかる費用を比較してみよう
電車広告の種類について、おわかりいただけたでしょうか。
それでは次に各広告の費用についても考えていきましょう。
まず、電車広告と一口に言っても、広告を出す時期や路線によって費用に大きな違いがあります。
どの企業も広告を出したいタイミングはある程度同じであるため、時期によって料金がつり上がることがあります。
また、地方のローカル線とJR山手線とでは利用客数に違いがあるので、路線によっても料金は大きく異なります。
電車広告の料金はかなり複雑な料金体系になっています。
そのため、ここではわかりやすい電車広告料金の一例として、最も費用の高い時期の山手線をピックアップしてみていきましょう。
略称や専門用語も多いので見づらいかもしれませんが、ざっくりと金額だけでもチェックしてみてください。
【山手線・中吊りポスター(サイズ:B3)】
◎山手線・単線枠
◎時期:2週間(4月・6月・7月・9月・10月・11月・12月・2月・3月)
◎数量:800枚
◎料金:3,100,000円
【山手線・まど上ポスター(サイズ:B3)】
山手線・長期枠
時期:1ヶ月間(4月・5月・6月・7月・9月・10月・11月・12月・3月)
数量:800枚
料金:3,100,000円
【首都圏全線・ドア横ポスター(サイズ:B3)】
JR東日本・ドア横新B
時期:特定月の7日間
数量:38280枚(首都圏新型車・□字型4面・戸袋4面)
料金:3,000,000円
【首都圏全線・ステッカー(サイズ:16.5cm × 20cm)】
首都圏全線・ドア横ステッカー
時期:1ヶ月間(4月・6月・7月・10月・11月・12月・3月)
数量:10,140枚(ドア横)
料金:9,180,000円
【山手線・中央線快速等(全6線セット)・デジタルサイネージ】
長期スポットCM(電車内液晶画面)
時期:26週間(10月7日〜4月8日)
時間:30秒
料金:148,000,000円
【山手線・広告貸切電車】
山手線ADトレイン3編成(33両)
時期:特定月の半月
数量:中吊り(B3:495枚)、ドア横(B3:690枚)、まど上(B3:1.815枚)、ステッカー(16.5cm × 20cm:690枚)、デジタルサイネージ(15インチ:264箇所)
料金:30,000,000円
【山手線・電車車体広告】
山手線 E231系(11両編成)
期間:2週間
場所:窓・ドアガラス部を除く側面。1両1側面あたり約5平方メートル以下
料金:30,000,000円
※広告名や料金は株式会社オリコムの車両広告料金表一覧を参照。
料金が1番高く、効果が1番ある広告場所はどこなのか?
このように、電車広告の料金を比較してみると、広告場所や掲載期間によってかなり料金に違いがあることがわかります。
単純に料金を見ただけで比較できれば簡単なのですが、期間や数量(枚数)に違いがあるので、電車広告の効果を単純に比較することはできません。
それでは一体、本の広告という点で考えると、どの広告が1番料金が高く、最も効果が高いのでしょうか。
いろいろな意見があると思いますが、僕が出版社に勤めていたころは「ドア横ポスター」が最も好まれていました。
液晶での電車広告は意外と割安
料金だけでみると、デジタルサイネージの1億4800万円に目がいってしまいますが、期間が26週間と長期間です。なおかつ映像を使った広告なので相対的にみれば高いとは言えません。
本の広告なので、デジタルサイネージという高額な広告に費用をかけるのは現実的ではありません。
本の広告は短期間で勝負を図るのが鉄則
一方のドア横ポスターは期間が7日間という短期間でありながら、料金は300万円とかなり高額です。
そして、本はデジタルサイネージや電車車体広告などで長期的なブランディングを図ることにあまり意味がありません。
新刊や既刊の売り伸ばしをするとき、短期間で集中的に宣伝をかけるのが1番効果的です。
ダラダラを本を売ろうとすると、次々と発売される他の新刊に埋もれてしまいます。”瞬発力”で本を売り伸ばすことも、出版社として考えなければいけません。
ですから、本の電車広告という視点に立つと、相対的に1番高く、1番効果があるのは「ドア横ポスター」なのです。
広告の効果は数値化できないため、費用対効果を明確に割り出すのは難しいものです。
しかし、実際にベストセラーとなる多くの本がドア横ポスターで広告を打っています。
本の売り上げからあげられる利益と支払える費用のバランス、そして広告効果を考えるとドア横ポスターが最適な選択なのです。
ベストセラーとなった本の多くがドア横ポスターを使う
出版業界においては、ドア横ポスターを打てば一定数は売り上げを伸ばすことができると言われています。
反対に、「ドア横ポスターに広告を打たないでベストセラーになった本があったら見てみたい」と言う書店員がいるくらい、ドア横ポスターの効果は絶大です。
電車広告が決定すると、出版社の営業はそれを”ネタ”にして注文を取ろうとします。
その際、「広告が出る場所」によって書店での本の展開や待遇が大きく異なります。
新聞広告よりも電車広告のほうが圧倒的に仕入れ担当の反応が良いのです。営業をかけやすくなるので、営業部としても士気が高まります。
豊富な資金力と広告会社とのつながりがある出版社は強い
ドア横ポスターを上手に活用している出版社の一例として、サンマーク出版があげられます。
サンマーク出版は新刊発売時にシリーズ既刊本とセットでドア横ポスターに広告をうち、非常に巧みな電車広告戦略をとっています。
新刊と同時に既刊をセットで売り出すことで、既刊にも改めて動きを持たせるのです。
一般的に新刊からいきなり電車広告を打つ出版社はあまりありません。
新刊の発売後、ある程度の売れ行きを確認してから、さらに売れ行きを伸ばす目的で電車広告を使うことが多いのです。
ベストセラー本を生み出すのに大きな効果をもたらす電車広告についておわかりいただけたでしょうか。
適切なタイミングと適切な広告の形態を選択することが、ベストセラーへの大きなカギとなるのです。
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