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トラウマを溶かす(前編)

週末、ボディワーク入門WSを中目黒でおこないました。
現在このシリーズは3本立てになっていて、今回は「トラウマを溶かす」というテーマに沿っておこないました。

この記事では、このワークショップでお伝えした内容を書いていきます。

自然界での闘争逃走反応

闘争逃走反応は、戦うか逃げるか(すくむか)反応とも言われる恐怖に対しての反応です。動物の反応とされますが、もちろん私たちも動物ですから、恐怖に対して同じような心の動きが起こっています。

例えば、ジャングルの動物の生活であったり、自然界を映像で捉えた番組の中でシマウマがライオンに出遭ってしまった場面を観たことがあるのではないでしょうか。

ライオンに出遭うや否や、シマウマにはこの闘争逃走反応が起こります。シマウマは必死に逃げ、そして運よく逃げ切れたとします。シマウマは闘争逃走反応という便利な機能によって、命を永らえることができたのです。

そしてその後、助かったシマウマは湖のほとりかどこかで、ブルブルブルッと全身を震えさせます。実はこの自然界で起こっている一連の流れの中に、「トラウマの発生とヒーリング(癒し)」があらわれています。

私たちの闘争逃走反応

闘争逃走反応は、私たちを含めた動物の自然な反応です。変な人に絡まれたり、昇進試験や何かのチャレンジをする場面であったり、あるいはコロナウィルスなどの未知の脅威によって社会不安が起こった場合に、私たちにもこの反応は起こっています。

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この闘争逃走反応は、私たちが生き延びるために必要な反応です(でした)。文明開化する以前は、この反応によって生き延びることができていたのです。昔の私たちにとっては、とても便利な機能だったと言えます。

ところが、文明開化後の現代社会の私たちにとってはプラス面よりもマイナス面が大きくなってきます。文明開化後、私たちは簡単に安全になり過ぎたため、ストレスとの勝負が一瞬で決さなくなりました。ライオンに食べられてしまうかどうか、その勝敗は一瞬で決まります。食べられてしまったらゲームオーバー、逃げ切ることができればセーフ。決着は一瞬でつきます。

ところが、現代の私たちの場合は勝負は一瞬でつかないのです。駅か何処かで、変な人に絡まれたとします。すぐに決着すればいいですが、相手が粘着質で翌日も、翌々日も...とそんなことは想像したくもないですが、嫌な状況が続く可能性もあります。警察に相談してもすぐに解決しなかったり、弁護士さんに相談して...と自然界とは違って、一瞬で決着はつきません。

昇進試験、受験だってなんだってそうですが、何ヶ月も前からテスト準備期間となります。その期間中、私たちはストレスを感じ続けることとなります。そしてテストに落ちてしまった場合、親や家族に合わせる顔がないだとか、同僚の目が気になるだとか、あれやこれやとストレスは続きます。昇進試験に落ちたらゲームオーバーとはならず、私たちの人生は続いていきます。そして、コロナウィルスも同様です。ある日突然あらわれたこの社会不安によって、私たちは強いストレスを受け続けています。

自然界とは違って、ストレスとの勝敗が一瞬で決しないこと。このことが、トラウマとの問題をややこしくさせています。

自然界のヒーリング(癒し)

自然界の1つの風景、ライオンから逃げ切ったシマウマの話に戻りましょう。逃げ切った後のシマウマは全身を大きく、ブルブルブルッと震わせます。この全身を震わせる行為によって、シマウマはライオンに殺されそうになった強いトラウマをふるい落とします。興味深いことに、全身を震わせた後のシマウマはまた平常運転に戻ります。何事もなかったように、また普段通りの生活に戻っていくのです。

シマウマにとって全身を震わせることは、大きなヒーリング(癒し)になっているのです。

チック症状と貧乏ゆすり

私たちはシマウマのように、トラウマを振り落とすことができません。全身を震わせることができず、身体の一部分を震えさえたりします。例えば、瞼(まぶた)を無意識に震えさせるチック症状です。瞼が勝手に震えていることが気持ち悪くてストレスに感じている人もいれば、震えているのにこの状態に気づかずに生活している人もいます。どちらにせよ、それはストレス反応です。ストレスを抱えているということを示唆しているチック症状ですが、この瞼の動きによって癒しが起こることはありません。シマウマのようにストレスを振り落とすことはできないのです。

貧乏ゆすりも同様です。きちんとした教育をされてこなかった人、マナーの悪い人が貧乏ゆすりをするという印象があるかもしれません。そういう側面もあるかもしれませんが、ストレスがなければ、貧乏ゆすりはしないでしょう。イライラしていたり、何がしらかのストレスを抱えていることで人は貧乏ゆすりをするのです。そしてチック症状同様、この動きによって癒しが起こることはありません。

私たちの場合、ストレスが継続的に続くことがほとんどであること。そして、全身をシマウマが震えさせるようなトラウマを振り落とす方法を、私たちは持ち合わせていないこと。この2つの事実が私たちのトラウマとの関係を複雑にさせているのです。

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