素直さの回復

私は24歳から2年間、ほぼ家に引きこもっていたことがあります。俗に言う自律神経失調症(うつ状態、心身症)に該当する状態でした。心療内科に行き、薬をもらい、優しい(でも薬臭い)先生と話します。良い先生でしたが、薬の副作用を伝えたところ「私には合うんだけどねえ」と話されて、「だから薬臭かったのか」と、先生も病んでいるのかと絶望的な気分になったりもしました。

ずっと自分は「早く治りたい」と思っている、と当時は思いこんでいました。ところが、治った後に気づいたことは「自分は治りたいと思っていなかった」ということでした。治ってしまうと不都合なことが、実は多々あったのです。メンヘラと呼ばれるような拗れた状態だと、人は自己憐憫の奴隷になっています。

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アウェアネスタッチ、ボディワークはその拗れを少し解く(ほどく)機能を持っています。身体の過剰な緊張は、過去をあらゆる意味でホールドしています。身体は過去の経験、心理状態を記憶していて、その緊張によって身動き取れなくなっているのです。それを溶かすことによって、緩み、拗れた状態から素直さの回復が起こります。これは一時的なもので、思考や身体の使い方の癖・習慣によって、また元の状態にいずれは戻っていきます。ただ、この一時的なタイミングに、本来の自分、より健全なほがらかな自分を取り戻すチャンスがあります。

この一時的なタイミングを逃すと、また拗れはじめます。ある人は知的ぶって自分や他人を否定しはじめるでしょう。ある人は札束で人の顔を叩くような振る舞いをしはじめるでしょう。ある人は自己啓発セミナーやスピリチュアル系のセミナーに統一感なく、彷徨うように参加します。人生は再び、迷走しはじめます。

頭でっかちになったり、地に足つかなくなったり、素直さが消失してしまい、また拗れていく。私の24歳からの2年間は、そんな迷走の日々でした。

そういう時期のことを振り返ると、あの時期は「まだ治りたくなかったのかもしれない」と確信的に感じます。そう考えると、人生にはタイミングがとても重要なのかもしれません。そのタイミングが訪れたのなら、機会を掴めたのなら、その手を離してはならないのです。必死にその手を離さず、回復したあの日のことを懐かしく思います。あの日その手を離していたら、また闇に回収されて、2年が3年,5年と伸びていったことでしょう。

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