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トラウマを溶かす(中編)

前編では、「闘争逃走反応について」と「自然界で起こっているヒーリングについて」書きました。

私たちの場合、ストレスが継続的に続くことがほとんどであること。そして、全身をシマウマが震えさせるようなトラウマを振り落とす方法を、私たちは持ち合わせていないこと。この2つの事実が私たちのトラウマとの関係を複雑にさせているのです。

ではどうするのか?

自分で自分をヒーリング(癒し)ができないことを、前編でお伝えしてきました。そもそも、私たちは無人島で生きていく訳にはいかないのです。他者との関わり合うことで、確かに私たちは傷つくことがあります。

「いっそ、一人で生きていきたい」と思う日があっても、きっと傷つきながら、同時に何かを学んでいます。そして、また他者との関わり合いによって、誰かによって癒しが起こったりしています。

身近な人による癒し

私たちは傷ついた後、身近な特別な存在によって癒されることは、日々の生活の中で少なくありません。例えば、親や家族、恋人や親友によって私たちは癒されることがあります。自分を裏切った恋人の傷が、新しい恋人によって癒されること等もよくある話です。

とは言え、傷ついた心を抱えて帰宅したあなたは、それを打ち明けた親や家族により傷つけられてしまうということも、残念ながらまたよくある話だったりします。

親や家族は、セラピストでもヒーラーでもないので、仕方がないのかもしれません。癒されなかったどころか、親や家族によって、より深く傷つけられてしまうこともあります。悲しいことですが、仕方ないのかもしれません。親や家族を責めても、また問題は複雑になります。より傷は深くなっていくのであれば、諦めた方が良いのかもしれません。

ただ話を聞いてくれたら癒されるのに、人は余計なエゴを押しつけて身勝手なアドバイスをしたがってしまうものなのです。親や家族、身近な人ほど、そうなってしまうものなのです。

話を戻します。

身近な人に癒されることのなかった傷は、また孤独を抱えていて癒してくれそうな誰かがいない場合、このトラウマに対して私たちはどうすればいいのでしょうか。

鍛えるのか、癒すのか

私は中学生の頃、いじめに遭ったことがあります。登校拒否という選択、闘争逃走反応の逃走を当時の私は選択しました。

当時、学校の先生や母親の働きかけによって、また再び学校に行くことになります。それは今振り返っても有り難い話でした。あのまま逃走し続けていたら、どうなってしまっただろうかとは確かに思います。私学だったので、中学生で留年することになっていたでしょう。教師や親の立場で考えると正しい、愛ある対応をとって頂きました。

ですが、私はいじめの傷を受けたまま、恥ずかしい想いを抱えたまま、高校に進学することになりました。内部進学だったので、同じ面子とその後も時間を過ごすことになります。傷は癒されることのないまま、私はまた戦場に戻されてしまったのでした。

強くなるしかない、と。そのように考え、私は空手を習い始めました。自分の傷を癒す過程を経ることなく、鍛えて自分を強くする道を選んだのです。

実際に私は強くなり、私をいじめた相手を謝らせました。私をいじめていた人たちの多くは、私が強くなったことを怖がっているという話も聞きました。達成感は確かにありましたが、私の中の淋しさは消え去るどころか大きくなるばかりでした。私の心は拗れはじめ、より屈折していくことになります。

鍛える前に必要な癒し

ヒーリング(癒し)の時間を傷ついた後にきちんと設けていれば、私の10代、そしてその後の人生は違ったものになったかもしれません。今より、多少マシな人間になっていたように思います。

もちろん、過去を変えることはできません。ですが、傷を癒すことなく強くなることで克服しようとする方法論は少年漫画の世界で十分だと感じます。現実の世界でその方法論を選択すると、固結びした紐をより引っ張り合うような、よりトラウマは硬く強固で深刻なものになっていくのです。緩めて、解いていくことがもっとも重要なのです。

身体の回復も同じ

私はいつも身体的トラウマと心理的トラウマを分け隔てなく、同じものだと伝え続けてきました。

「膝が痛いのは膝周りの筋肉が弱いからで、鍛えなければならない」「腹筋が弱いから、腰痛になる」「疲れやすいので、鍛えよう」などなど。すべて、間違った私たちの思いこみです。鍛える前に癒されるべき、なのです。

心の問題と身体の問題。違う問題のように感じる人もいるかもしれませんが、一切の違いはないのです。

ボディワーク入門WS

他人のトラウマに触れていく(あるいは他人にトラウマを触れられる)のは、関心がある人にとっても少しハードルの高いチャレンジです。

このワークショップは、初めて他人の身体に触れる人を前提に作られています。練習としても安全であり、尚且つ、翌日からお仕事だったり、家族や友達に練習などで実践できるエリアのトラウマに働きかけることからワークショップははじまりました。

後編では、具体的なボディワークの技術についても触れていきます。

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