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『かわいそ笑』を読んだ

2022/8/15、読了。

梨.psdさんの怪談が好きで、ちょくちょく読んでいる。Twitterの可愛らしいアイコンとは似ても似つかぬ、じめじめした嫌なお話を創られる。九州地方の民俗を拠点に、幾つかの事象から総体的に怪異の存在を知覚させてくれる書きぶりが斬新なのだ。SCP財団の存在を知ったのも梨さんの創作を通してのことである。良質な怪談には多くの考察隊がつく。梨さんの作品から派生したYouTubeのゆっくり解説動画等にも面白いものが多い。本書は、そんな梨さんの初著作ということで、応援の意味も込めて予約注文した。

インターネット老人会の会員なら懐かしさのあまり笑ってしまうような再現度の高さで、インターネット黎明期の怪異が語られる。pixivで二次創作を書いたことのある人々は、読むことをお勧めする。黒歴史を抉られて悶えること請け合いである。

一読しても判然としないのが梨さんの作品の特徴であるように思う。何度も読み返すごとに新たな怖さに気付く、まさにスルメ的な魅力がここにある。読んでいるとしばしば、ああそうか自分はこれに怖さを感じていたのか、と気付かされることがある。怖さの言語化・マーケティングが実に上手いのだ。

現在は発売開始直後だが、しばらく待っていれば解説の1つや2つ、ネットに上がることであろう。自身の創作への反応も巻き込むことで終始ネットという媒体を武器にしつつ、日本古来の土俗的な恐怖を描き出す。それが梨.psdという謎の怪談作家の何よりの強みなのではないか。

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