『うさぎおいしーフランス人』を読んだ

2021/10/6、旅先にて読了。

世界的な作家に向かって言うことではないのだが、この本、ものすご〜くくだらない。別に貶しているわけではない。むしろ褒めているのだ。

ぼくがより本を好きになるきっかけとなった『夜のくもざる』然り、村上さんは、たまにナンセンス極まりないショートストーリーを書きたくなる時があるようだ。かるたの形式を採る本書も、その系列に連なる。

馬鹿馬鹿しさには振り切ったグルーヴ感が必要だというのがぼくの自論なのだが、その点本書は実にグルーヴィーである。それでいて、とぼけていながら都会的に洗練された、今は亡き安西水丸さんのイラストと、村上さんの独特なユーモアがこぼれ落ちんばかりの文章が、いつもながら息の合った調和を見せている。「飼い犬に手を握られた」の項なんて最高である。

もうノーベル賞がどうのこうのと毎年騒ぐのはやめにしたらいいのにと思うが、これは間違いなくイグ・ノーベル文学賞ものである。たぶんないけどね、そんなの。

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