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『日本語の美』を読んだ

2021/10/11、読了。読み終えた場所も記録するのが常だが、はて、どこだったっけかな。

ドナルド=キーン先生のことを日本語が上手いと褒めるのは、もはや失礼に値する。母語ではない言葉で文体を確立することがいかに難しいか、語学系の大学に通っているので少しはわかるつもりだ。平易だが少しも幼稚でない、簡明にして知的な文章。いったいどれほどの勉強をすればこの境地に到れるというのか?

今は亡き日本文学の世界的権威が、日本語にまつわるあれこれを自身の体験に絡めて綴る。海軍の語学専門職として従事した経験があることや、日本語よりも中国語を先に学んでいたらしいことには驚かされた。数々の文学者との交遊録は、読んでいるだけで彼らの人となりが手にとるように想像できた。ライフワークとなった『日本文学史』の編纂後も尽きることの無かった探究心には、頭が下がるというよりも畏怖を感じる。

本書のあとがきは、氏の「私にとっては日本語は外国語ではない」という言葉によって締められている。なんという格好良さだ!目頭が熱くなった。

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