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ep.5 眠れぬ夜とプランβ -サントリーニ島の冒険-

楽しみにしていたミロスにはいけないのかもしれない。がっかりして部屋への階段をのぼる。宿もなくなるし、旅の初日からこんなんで大丈夫だろうか。何から手をつけようか。こういう時は直接地元の人と話した方がいいのだろう。とりあえずフェリーのキャンセル通知メールにのっている電話番号にかけてみる。電話は出てくれたが、もちろん「明日のフェリーはない」との返事。まぁそうだよなと諦めかけた私に「サントリーニは現地にフェリーの代理店があるから、そこにも電話してみな」とアドバイスをくれた。

意外にも20:00まで営業しているというその代理店にダイヤルすると、やはり「明日はむーりー!」との返事。私もむーりーと粘ったところ、もしかすると大きなフェリーが臨時で走るかもしれないと言う。なるほど大きなフェリーなら波が高くても動く場合があるということか。

詳しくは明日の朝確認せよ、とのことでこの続きは持ちこしだ。ミロスに行ける可能性があるのとないのでは気持ちが少し違った。本来到着の余韻に浸りたい夜だったが、続いてミロス島で予約していた二つのホテルに、行けないかもしれないと電話する。ホテルにとっても思わしくない状況にも関わらず、それぞれでオーナーと思われるヴィクトリアもマルガリータも明るく温かい応対をしてくれて、「もし今回は来れなくてもまたぜひおいでね」と。

シャワーを浴びて寝る支度をする。ロンドンとフィラは2時間の時差があり、体内時計ではまだ21時だが、現地時間は23時。ベッドで横になるも、明日からの日程に不安もあるためか眠れない。馴染みのポッドキャストをかけ、時間は午前2時、3時と過ぎていく。

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全く寝た気のしない人をよそに、朝7時にセットしたアラームはきちんと仕事をこなす。サントリーニの二日目。8時からフェリーの代理店が営業開始のため、着替えてさっと外へ出る。

到着した小さな店舗には、これまた起きたばかりの眠気をまとった若い女の子が座っている。「今日のフェリーは?」と単刀直入に聞くと、「何も動かない」という。ここ数日は天候により厳しそうだと、あまり希望の持てない状況に肩を落とし、トボトボとあのバスステーションへ。今日はだめだったが、明日は大型フェリーがスケジュールされているため、私の希望はまだここにある。港までのバス時刻を確かめておくのだ。

昨日と全く同じ格好のデニムジャンパーに黒縁メガネのお姉さんが、またあんたかいな、とばかりにバスステーションの事務所に座っていたが、昨日のような馬鹿にした感じはもうなかった。明日のフェリー出港予定は朝8:55。そんな朝早くにバスはないかと思いながらも一応質問してみると、明日は全くバスの運行予定がないという。これはもうフェリーのキャンセルを見据えているようなものである。

足早にホテルへ戻ると時間は9時をまわるところだ。あのオーナーらしき男性がレセプションに戻っている。今日のフェリーはキャンセル、私は宿がないことを説明すると、このホテルには1部屋空きがあるという。値段を尋ねると、おじさんは背を向けて年季の入ったノートを開きちょっと考える。本来の値段から5ユーロまけてくれると言うが、確か他にもう少し安いホテルがあったと思った私は、とりあえず「ホテルは保留にします」と言うと、おじさんはまたしても私への興味を失ったようだった。

ついでに、宿泊しなくとも港への送迎依頼は可能か尋ねてみる。これは朝出発でフェリーの状況次第では最悪キャンセルになることを付け加えると、おじさんはちょっと考えてからOKと言い、送迎は24時間体制でやっていると、頼もしい返答をしてくれた。ミロス島行きがなくなり時間をもてあそぶ私は、さらにホテルが運行している本日の日帰りツアーに参加してもいいか、と尋ねるとそれもOKだという。10:30開始だから、それまでに今晩の宿を決めよう。

時間は瞬く間に過ぎ、ツアー開始10分前。しびれを切らしたおじさんが、早くせよと、部屋までノックしにきた。「ただいま!」と急いでパッキングし、レセプションへと舞い戻る。諸々の支払いを済ませて、周りを見渡すと意外にも10人ほどの人が集まっていた。ドライバー兼フォトグラファーと名乗る、ニコという大柄な男性に率られ、昨日の豪華ヴァンとは違う、普通ヴァンに乗り込む。私はガラリと空いた一番後ろの席に座りこむ。

この車はまずどこへ向かうのか。サントリーニの横顔を見てみたい。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
1ヶ月以上使えなかった洗濯機がやっと直り、ホッとしつつもコインラインドリーも割と好きだったなぁと思う今日この頃です。

「サントリーニ島の冒険」は、100ページを超える手書きの旅誌をもとに、こちらnoteで週更新をめざしています。

初めてのギリシャ飯に喜び、フェリーのキャンセルに気づかずにいた、一つ前の記事はこちらです。

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