ロンドン最強迷子

Excuse me.
と突然声をかけられ、視線を向けた先は、ちょっと怪しげな女の子。
どうやら道を聞きたいようだが、かなり落ち着かない様子。
少しパニック気味で、不安が声色にのり、目は助けを訴えている。

完全に迷ってしまったとのことで、今自分がどこにいるかもわからない、と言う。
ちょっと笑ってほしくて、ジョークのつもりだったが、
Do you know that you are in London?
と聞くと
London? Is it capital London?
と予想以上の返事が返ってきた。
ロンドンにいることもわかっていないってどゆこと!!!
と今度は私がプチパニック。
Yes, it's capital London. What happened?
と、これはもう何が起きたか聞くしかない。

彼女によると、途中まで友達と電車で一緒だったが、友達と別れた後、訳がわからなくなり、とりあえず降りた駅がこの辺りだったという。
元々は東欧から来ており、本来行きたい駅もロンドンから離れた街だったことがわかる。

ひとまず次の駅まで連れて行き、その先は「インフォメーションで尋ねるといいよ」と伝えると、「英語がよくわからないから代わりに聞いてほしい」という。

ということで、代わりに私が質問し、次の電車の情報を彼女に伝える。
これで大丈夫かと思いきや、「コンタクトをしていなくてよく文字が見えないので、プラットフォームまで連れていってほしい」という。

もうこれは東京に初めて出る妹を見送るような、不安でいっぱいの姉状態である。
プラットフォームまで連れて行き、この電車に乗ってこの駅で降りるのだ、と繰返し伝え、もし困ったらいつでも周りの人に聞くのだよ、と念を押す。

電車を見送った後、「ロンドン最強迷子」として私の記憶に残ることとなる彼女のことをその日は何度も考えてしまう。