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春菊(花)を食べる

 春菊といえば、勝手ながら冬のイメージが強い。名前に春が入っているのに。その上、ハーブだと思い込んで菊だと感じたことすらもなかった。

 昨年の夏、家庭菜園を始めた。不眠症が悪さをし、朝に起きたほうが生活が逆転したなと実感させられるほど昼夜が逆転していた中、いわゆる丁寧な暮らしにまともな生活の幻を見ていたのかもしれない。今となって考えてみれば、当時の私の中のガーデニングは一般的生活リズムの必要十分条件的な立ち位置だったのだろう。こんな愚かさも克服できたら嬉しい。

 話題を少し戻そう。最初は料理に買ってきたトマトの種が家の鉢で育つのを見て楽しんでいたのだが、なにせ栽培時期がズレていて肥料も特に与えていなかったので結実せず、微妙な気持ちになりながら、茎を切り刻んでアスパラ炒めの下ごしらえみたいだと内心笑って処理をした。
 ぽっかりと空いた鉢は寂しげで、今まで他の人の気持ちに気付けなかったときような気まずさのせいか、次に育てる植物を選んでいた。

 タイトルから見に来てくださった方、お待たせした。ここで登場するのが春菊である。私は冬がとても好きで、その理由の一つに春菊がある。だからガーデニング店で種を買って育てることにした。春菊は丸っこくてかわいいふたばを出し、そこから少しギザギザした本葉が姿を現す。去年はこの葉っぱと料理が生きる原動力になってくれていたと思う。

 話を今へと戻そう。つまりは春菊の咲く季節である。恥ずかしながら、菊だと知って花を見たのは刺身の付け合せぐらいでしか憶えがない。なんなら最近まで五十円玉に描かれている花が何なのかすら知らなかった。
 そんな私でも、とてもきれいな花だと感動するような花を咲かせた。菊感が薄れるのでトップ画像はすべて黄色の花を使わせてもらったが、中心は黄色で花びらの先が白くなっている花はとても素敵だ。もしかしたら「うちのこ」が一番だと感じるのはペットだけではないのかもしれない。それがわかっていても愛らしい。

こんな花を民家の鉢植に見た気がする
かわいい

 食べたいと思った。エディブルフラワーなんかは聞いたことがあった。それに野菜の、それも葉茎が食用の植物の花なら、そこまで有害な物質も多くは含まれないだろうと見込んでのことである。

 春菊ギーク(とはいえ多分ナード)の私は茎をかじかじするのがとても好きなので、トウ立ち(花のついた茎が高く伸びること)のデメリットとして挙げられる茎の硬化はメリットでしかなく、これまで苦手な夏への通過点でしかなかった春へのイメージも、先日のネギ坊主の件もあり、着々と良くなってきている。

 まずは煮込んだ春菊が好きなのでラーメンの具にすることにした。袋麺は比較的安くてアレンジも楽だからお気に入り。麺と一緒に春菊を鍋に入れる。萼のところは硬そうなので花も一緒に入れた。ネギ坊主とは違ってはちゃめちゃに花なので罪悪感がある。写真を撮り忘れたがなかなか映える画だった。いや、料理の写真は遍く素敵な気もしてきた。

 味はいつもの春菊ラーメン。スープにも春菊の風味を感じられてとてもおいしい。が、違うのはトウ立ちした茎の食感。ジャキジャキとした食感はどこかゴボウのようで、もうトッピングの粋を超えている。二人の主役が丼の中にいた。ただ一つだけ不満を言うならば、魚の小骨のように喉にぶつかる点だろうか。

 好きなものは最初に食べることが多いが、それが二つあるときは初めと終わりに食べるのがお得感があって好き。
 本題、花の食レポ。くったくたになっちゃってる。なんだこれ、えぐ味が強い。凝縮された感じがする。茹ですぎたせいか、花びらの食感はもはや皆無。わざわざ花を摘んで調理しなくてもいいんじゃないか?
 今回は醤油ラーメンだったがもしかしたら塩ラーメンだったら意外と合うのかもしれない。

 記事を通学時に何日かに渡ってダラダラ書いているうちに、いくつか花が咲いたので一つ生で食べた。花びらは柔らかくサクサクと歯が通り、春菊の葉を優しくした風味がふわっと香る。中心の雌・雄花の部分は少々えぐ味があってチビチビと食べるにはうってつけ。なぜラーメンの具に食用菊を見ないのか納得できた気がする。

 記事を書いているときに少し気になって食用菊のウィキペディアを見た。紫色のダリアのような綺麗な菊があって驚いた。と書こうと思ったらダリアはキク科らしいので、産みの親と顔のパーツが似ているね、くらいの感想だったかもしれない。小反省。あとシュンギク個別のページには特に花の食用に関する記述はなかった。トウ立ちする前に収穫したり流通が少なかったりするから仕方ないのかもしれない。

参照:


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