【感情紀行記】知足
なんとなく足らない。日々を満たす何気ない日常のモノクロの主人公として映し出される自分には何か足らないように感じる。足るを知る。満足。そういう言葉の重要性とか、尊さというのはかなり理解してきたつもりだし、説いてきたつもりであった。しかし、やはり人間である以上、ないものを欲しがってしまう。
人間は社会というものを作り上げて以後、無限の相対性の渦に巻き込まれてしまったように感じる。上か下に人がいるからその中間に自分がいることを確認するのだ。労働者がいるからこそ、非労働者たる貴族が存在するわけである。自分より下がいるから、自分が上なのであって、自分より上な人がいるから、自分は下なのである。これはあらゆる分野のあらゆる階級で無限に繰り広げられている。無限の対称性は、人間の醜態とも言えるが、社会的人間の本質とも言えよう。
しかし、そんな渦から脱却した個として生きようと何度も試みたが、やはり容易なものではない。自分に足らないもの、持っていないもの、そういうものを持っている人を羨み、妬み、渇望する。実際に手に入れても大したもののない何かを今日も追い求めてしまう。
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