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【ハラール入門編3/3】ムスリムの日本滞在時における悩みを知る。3,600件の相談DMから見えた、ムスリムインバウンドの半端ない可能性。

ハラール入門編最終回です。
1話目は、ハラールとはなに?
2話目は、ハラールとムスリムフレンドリーの違いは?(+おもてなしの心得)
について簡単に紹介しました。

3話目は、ムスリムの日本滞在時における悩みについて。
ここは2話目の続きという位置づけになります。

日本は観光コンテンツとして東南アジアのイスラム教国でも大人気。
しかしながら、宗教と食に対する理解が日本はまだまだ後進国。
それ故、彼らは日本滞在時に食で苦労しています。

文化的背景が全く異なる。
ほぼ無宗教そして単一民族国家の日本ですし、酒や豚が食文化のベースでもありますから食に関しては彼らと相性は良くはないのも事実。

東南アジアのムスリムも現地小売店の日本食コーナーは素通りです。なぜなら日本食は酒、ミリン、豚が含まれているものが多いと知っているから。

それでも、日本という国に魅力を感じるムスリムは多いです。
2022年11月にはマレーシアから約2万人の観光客が日本を訪問しました。

私のインスタ(日本食☓ハラール特化)にも最近は、日本各地のハラールレストランに関する問い合わせDMが増えました。

今後需要拡大するムスリムインバウンドを獲得するためには、まず彼らの日本滞在時における悩み(不安、不満、不便)理解が大事

毎日約10件以上DMで相談を受けている(累計3,600以上)私の経験をもとに、彼らの悩みを一緒に紐解きましょう。※ほどすべてのDMに返信、完全ボランティアです。

不安


不安の中で一番大きいのは、「この○○食べたいけど、ハラル?」というものです。特にお菓子が多いです。そもそも日本とイスラム教国とは食品製造における条件が真逆なのでハラルとは言えません。そこからまず説明をしてます。「あなたたちはハラル原料ベースの食品が基準だけど、私たちは酒やミリン、豚が当たり前にどこにでもある環境下。なので、ハラルと言うためには監査が必要。せいぜいモスリムフレンドリーだけど、原材料をメーカーに聞かない限りわからない。」という返事を既に数千回してます。※最近はもうコピペ。

私に問い合わせるパターンで多いのは2つ。
1.上司や知人から貰ったけど食べていいのか。
2.日本の食品が好きで食べたいから。

また日本人にも当てはまるのですが、「商品の原材料表示がすべて」と思っている人が本当の多い。表示ルールは非常に難解で食品メーカー界隈でも品管など一部の専門家以外は基本的に知りません。○%未満の含有量であれば表記は不要など、そんなルールがあるので。「ハラール 菓子」と検索すると多くのブログ記事が出てきますが、ほぼすべての記事がこういう背景を知らない素人が書いているので私からすると「無知の無知によって生じたお節介」でしかない。

そんなことを知らない外国人もまた、Googleレンズで翻訳して自己解釈します。これがめちゃくちゃ危険。Facebookにはハラール食が喫食可能かどうかを問い合わせるコミュニティーがあるのですが、素人が裏面表示を翻訳して判断しているのでこれも危険。

最終的に自己判断なのですが、他人に自己判断で喫食をすすめるのは危険です。なので私もハラール認証があるものをまず勧めるスタンス。メーカーに問い合わせてハラム原料やコンタミの可能性がないものは、ファクトを伝えた上で相手の判断に任せます。原材料もいつどう変わるかわからないし、コンタミも新商品が出ればそのリスクも増えますので。

そして私が大事にしているのは、他人の判断には何も口出ししないこと。
日本の食品メーカーで日本ハラール認証を取得した経験を基に、ロジカル的に説明するスタンスを徹底しています。宗教は感情が入りますし、私はムスリムではないので感情論で展開しません。

不満

上述の不安ともかぶる部分は多いですが、「日本ではムスリムが喫食できるものが少ない」という点ですね。

日本食は、酒やミリン、豚がベースの食事が多いです。もちろんメイン顧客は日本人なので日本人に合う味付けやメニューじゃないと店は経営できませんし、実際にコロナ渦では多くの観光客向け飲食店が閉店しました。

東京と大阪には認証を取得している飲食店が多い(と言っての合計20軒ほどでしょうか)のですが、その他地方都市はほぼないです。あったとしても、インド料理やパキスタン料理で、ムスリム観光客が日本に来たからこそ食べたいというハラール日本食とは異なります。

単一民族国家かつ無宗教に近い日本ですから、食のダイバシティー化は今後も課題でしょう。かと言って別にハラール認証を取得する必要はないのです。第二話で紹介した通り、「できることをオープンにして伝える」姿勢が大事なのです。日本スタンダードの認証飲食店では食べない(日本の現実に合わせた認証なので酒提供している店もある)というガチ勢もいます。彼らはマレーシアでもJAKIM認証がないムスリムオーナーでも来店しません。こういう層はもう諦めるしかないです。「日本に来た訳だし、できる範囲で対応してくれる店の中で、自分の基準と合う店に行こう」というマイルド層を狙うことから始めればいいのです。

そんな彼らをターゲットにまずは身軽なSNSで情報発信がおすすめ。食に関しては悩みが皆共通のなのムスリムの拡散力は半端ないです。私のインスタの一例ですが、実は洋酒が入っている東京ばななの投稿、クアラルンプールで一番高価なハラルラーメンの紹介投稿では、こんな↓インサイトが取れました。悩みが深いからこその拡散、ここを意識した投稿がおすすめです。



不便

そして最後は不便。まぁこれも不安と不満と対して変わりませんね。
喫食できる食品調達が難しい、という点。

実は、ムスリム観光者の中でも自炊する人って少なくないんです。
そのために ホテルではなく、airBnBに滞在するという層が実はめちゃくちゃ多い。以前、インスタのストーリー投稿で彼らにアンケートを実施。

その結果からは、
・日本滞在は1週間以上
・宿泊拠点は2以上
・実はホテルよりairBnB派が多い

という興味深い結果を得ることができました。(N=600 )

自炊はもちろんローカル料理がベースになるので、調味料などは自国から持参しています。東京や大阪ならハラールレストランへのアクセスがまだ容易ですが、地方都市はほぼないですからね。

実は在日ムスリムに特化したECサイトが結構あるんですよ。
ビジネスパートナーがオーナーをしている西千葉のSalam117さん。取り扱い商品は、グロサリーを中心にしつつ何と冷凍食品まで。鶏や牛肉は海外産のハラール認証品で、日本各地から毎日注文が入るそう。

また最近だと皆さんのご近所にもある業務スーパーが在日ムスリム界隈でも話題です。輸入商品が多く、その大半がハラルという特徴があり、冷凍肉関係もハラルのものが多いです。

まとめ

このような悩みは一例ですが、まずはこれらの悩みを知ることが大事です。
インバウンド対応は行政なのか営利目的の民間なのかで対応が変わってくるのも事実ですが、ターゲットの悩み解決が私達それぞれの目標達成に繋がる点は同じ。

食の悩みは絶対的、ムスリムインバウンドを取りに行くには外せません。参考になるのは、岡山市の取り組みで、マレーシアでも担当の方に会って意見交換しました。

自治体、宿泊施設、飲食店の方には具体的にこうして頂きたいという明確なアイデアがあるのですが、これは長くなるのでまた別の機会に。(具体的な展開事例もあるので、これから取り組みたい方には参考になるかと)