『ピエール瀧の23区23時』〜セカンドシーズン 新宿区編

ピエール瀧が東京23区の各区を夜中に散歩したら一体何が起こるのか?!という自由徘徊実験企画。決まっているルールは“23時になったら写真を撮る事”と“100円自販機を見つけたら興味本位で味見をする事”のふたつ。それ以外は基本行き当たりばったりのゆるゆる企画。ファーストシーズンは2010年に開始。その模様は『ピエール瀧の23区23時』（産業編集センター／刊）として2012年に書籍化されている。10年後の2020年、セカンドシーズンがスタート。

新宿区編

東京さくらトラム（都電荒川線）「早稲田」駅スタート

ー今日は新宿区です。瀧さんが「早稲田大学界隈を見てみたい」とのことでしたので、本日も案内人をお願いしました。作家の本橋信宏さんです。本橋さんは早稲田大学出身で、卒業後も高田馬場に事務所を構え、この近辺をテーマにした『高田馬場アンダーグラウンド』という書籍も執筆されています。本橋さんは、瀧さんが出演されているドラマ『全裸監督』の原作者でもあるのですが、お２人がお会いするのは初めてですか？
瀧：初めてですよね？　ピエール瀧です。よろしくお願いします。
本橋：そうですね、はじめまして。本橋です。よろしくお願いします。

ー今日は本橋さんにご著書『高田馬場アンダーグラウンド』に登場した早稲田大学周辺のアンダーグラウンドな場所をご案内いただきます。
瀧：買って読もうかな、とも思ったんですけど、知らない方がおもしろそうだと思って読まずに来ちゃいました。なんかすみません。
本橋：いいんですよ。ちょっとベタですけど、まずは早稲田大学大隈講堂に行って、そこからかぐや姫の「神田川」のモデルになった三畳一間のアパートを見に行こうかな、と。
瀧：今車で来たんですけど、「ナビに映ってる川がちっちゃいな、これ神田川かな」って思ってたんですけど、やっぱりそうなんですね。
本橋：昔はどぶ川だったんですけどね。南こうせつさんの時代は。
瀧：へえ。ところで本橋さんは元々どちらのご出身なんですか？
本橋：所沢なんですよ、所沢に生まれて、大学でこっちにやってきて、それからはこの辺ですね。
瀧：早稲田近辺は１度はまるともう抜けられない？
本橋：僕は１回出たんですけどね。結局戻ってきて、今もこの辺に住んでますね。

ー瀧さんの周り早稲田大学出身者多いですよね。
瀧：そうなの？　誰だれ？
ー宇多丸さん（RHYMESTER）、西寺郷太さん（NONA REEVES）、Mobyさん（SCOOBIE DO）、みんな早稲田出身ですよ。

瀧：あの連中ってそうなんだ!?　宇多丸は聞いたことあるけど。
ーこの３人の特徴になっちゃいますけど、理屈っぽい人多いですよね（笑）
瀧：そうなんだよね！　なんか知らねえけどディベート仕掛けてくるやつ多いんだよ。論破しなくていいのが音楽なのに、っていう（笑）。俺、大学って行ってないからさ。こういう学園都市的な感じのところってどうなってるのか全然わからないんだよね。あ、これアトム？　かわいい。もしかしてここってアトムの街なの？

本橋：最後の方に行きますけど、手塚治虫先生の仕事場があったのが高田馬場なんです。作中で科学省があったのも高田馬場。アトム誕生の街と言えます。
ー山手線の高田馬場駅の発車メロディーもアトムですもんね。
瀧：そうなんだ。電車全然乗らないからわかんない。
本橋：あっちがグランド坂って言うんですよ。昔は本当にグランドに通じてて。
瀧：グランド坂通りって言うんすね。写真撮っとこう。

本橋：それでこっちは、大隈重信の大隈通り。
瀧：ちょっとアカデミックな地名が多いすね。やっぱし。
ー『全裸監督』の瀧さんの役名なんでしたっけ？　ビデオ屋の店長ってことしか覚えてなくて。
瀧：和田ね。
本橋：Netflixはやっぱり凄いですよね。
瀧：『全裸監督』の脚本も、『ナルコス』やってたチームに１回シナリオ投げてチェックとかしてもらってるって話を聞きましたよ。
本橋：『全裸監督』観た人から「山田孝之さんは本当に性行為をしてるんですか？」ってよく聞かれるんですけど、してるかどうかはお尻の肉の凹み方でやっぱわかるんです。どっちなのかは、ここでは言いませんけど。

瀧：男性のお尻の肉ってことですか？　なるほどそうなんすね。そういうシーンがもしこれから先何かあるときは参考にさせていただきます。早稲田大学は、この街にあるんですよね？　ということは、この辺を歩いてる若者たちはおそらく早稲田大学の生徒たちであろうと。
本橋：はい。昔はもうちょっと雰囲気違ったんですけどね。あ、あそこのマンションの上の方に黒木香が住んでたんですよ。ここからだったら、当時の撮影所に歩いて行けたので。
瀧：なるほど。『ＳＭぽいの好き』が出た後の話ですよね？　へえ、ここか。この上のどれかだ。あの頃、そっちの業界の広がり方すごかったですよね、社会現象っぷりが。エロでそこまでって、ちょっと今はもうないっすよね。っていうか、それ以降ずっとないですもんね。何だったんだあれ？っていう気がしますけど。

無学無教養で早稲田大学に到達

瀧：あ、めっちゃモダンな建物が見えてきたね、何これ？
本橋：これはもう早稲田大学の一部ですね。
瀧：あ、これもう早稲田なんですね。俺、早稲田大学初めて来たかも。
ー学祭とかって呼ばれたことないんですか？
瀧：学祭？　ああ、早稲田の学祭一度来たことあるわ。電気グルーヴとしてじゃなくて、俺と清水ミチコさんでトークショーみたいなことやった気がする。
大橋：あれが、大隈講堂ですね。
瀧：へえ。大隈講堂、迫力あるなあ。

瀧：まだまだ表の顔っすよね、大隈講堂。ということは向かいのこっち側がキャンパスですよね？
本橋：そうです。誰でも入れますよ、っていうのが早稲田のウリなんですけど、今はコロナもあって閉めちゃってるみたいですね。
瀧：ワケのわからない、大学に住み込んじゃうヒッピーみたいな人っていっぱいいました？
本橋：私が入った時は、もうそんなにはいなかったですね。
瀧：今改めて思ったのは、俺、早稲田のこと何も知らないなって（笑）。野球とラグビーしか知らないって感じ。
ー鴻上尚史さんとか室井滋さんとか、在学中に演劇で有名になった人も多いですよね。
瀧：なるほど、あの人たちはすでに大学時代から有名だったってことか。あ、ちょっとマップ見に行っていいですか？　

瀧：うわ、馬鹿でかいじゃん、早稲田大学。施設、めっちゃいっぱいあるね。今講堂があるのはここだ。一応、正門ってあるんだね。じゃあこれは正門ということなんすね。桑田が入った早稲田（笑）。プロを引退してから後にちゃんと入学したっていう。何らかの欠落を埋めるかのように。
本橋：桑田は「巨人と密約はなかった」ってずっと言ってますね。「俺は早稲田に行きたかったから３年間ずっと勉強してた。密約があったら俺３年間そんな風に勉強してるか？」って。それ聞いて確かにそうだな、って思いましたけどね。
瀧：あれだけの選手で勉強してる暇があるのはすごいですよね（笑）。他の奴らは全ての時間を野球にかけてもレギュラーとれない中、お前はレギュラーをとって更に勉強もしちゃうわけ？って。そんなのさ、他の選手にしてみたらねぇ。
ー桑田、だいぶ浮いてたでしょうね。
瀧：いやそうだろうね。でも「ちゃんと恋もしなくちゃ」って恋もしてたんだもんね。やっぱスゲえよ桑田。
ー瀧さん、「早稲田と言えばこの人」みたいな、有名人で思い浮かぶ人誰かいますか？　スポーツ選手とかでもいいんですけど。
瀧：スーパーフリー以外で？（笑）
ーそれこそ宇多丸さんとかでも。
瀧：確かサンプラザ中野くんもそうだよね、早稲田の人はスキンヘッドでサングラスかけがちっていう（笑）。早稲田で思い浮かぶ人、誰か他にいたっけなあ。
本橋：サッカーの岡田監督とかもそうですね。実は同じゼミだったんですよ。
瀧：あー、岡ちゃんも早稲田ですか。岡田さん一応最初に日本をW杯に導いた代表監督ですもんね。「岡野、次ハズしたら殺すぞ！」って言ったら、なんとか最後に決めてくれて「よかった、殺さずに済んだ」と思ったっていう（笑）
本橋：じゃあ、次は神田川に行きましょうか。それからだいぶ距離があるんですけど、神田川のモデルになったアパートがまだ残ってるんで、それを見に。