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 社会的動物

 知人のいない街に越してきた。大学院と家の往復。大学生のときに比べ、急に人間関係が減った。端的に心理状態を言い表すと、「寂しい」だ。友人やら恋人でも作ればいい。今の時代、スマホがあればすぐに出会える。けれど、求めているのはそういう個人的関係ではないという確信がある。
 私は群れない人間だった。しかし、驚くべきことに、今私は群れることを欲している。
 そもそも、集団ヘの所属は、個人的関係のネットワーク的拡がりによって形成されると思ってきた。だから、私は群れることを求めているのではなく、各個人との深い関係を求めているのだと考えていたが、ひょっとするとそうではないかもしれない。
 本当は、コミュニティへの所属欲求から派生した、所属を強固にするための個人的関係の構築を目指していた可能性がある。
 寂しいのは、友人がいないからでもなく(いないけど)、恋人がいないからでもなく(いないけど)、社会参加していないからだと最近思えてくる。
 一人部屋にいて壁を見つめていると、社会貢献したいという奇特な人間の気持ちが理解できる気がしてきた。

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