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制約が創造を生み出してきた日本酒の世界。

日本酒は、とてもクリエイティブなプロダクトだと思っています。
せっかくnoteのプラットフォームなので、いろんなジャンルのクリエイターの方にとって、ちょっと参考になるかも知れない日本酒の横顔を紹介したいと思っています。

お米から生まれる多様な世界

これまであまり日本酒に接する機会がなかった方も多いと思います。
また、日本酒ってどれも似たような味わいだと思っている方も多いのではないでしょうか。

もし、あまり日本酒と縁がなかった方は、一度、気軽な感じで、違ったタイプの日本酒を比べてみることをお勧めします!
しっかりした飲食店や酒屋さんであれば、お任せでも提案してくれます。日本酒の多様な香りや味わいを体験していただくと、ちょっと日本酒の印象が変わるのではないかなと思います。

ちなみに、日本酒の定義は、法令で定められています。
和食や和菓子や日本茶の定義は法令で決められていませんが、日本酒には法令のルールがあるのです。
詳細な説明は省きますが、ざっくり言うと「米と米麹と水を使って、発酵させて、濾したもの」というのが柱になっています。

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ちょっと想像してみてください。お米の品質の差って、皆さんはどのくらい区別できますか?
巨峰とマスカットを区別するよりはだいぶ難しそうですよね・・

僕はこれまで、300くらいの酒蔵に訪問したことがありますが、酒蔵ごとの品質って全く違うんですよね。お米という素材から、これだけいろいろな日本酒の表情を見せてくれるのは、実に神秘的です。
これが日本酒の面白さであり、モノづくりの醍醐味でもあると思っています。

酒屋万流と呼ばれるモノづくりの世界

皆さんは、酒蔵を訪れたことはありますか?
酒蔵は歴史ある建物が多いですし、酒蔵の立地や気候風土を肌で感じていただくだけでもお勧めです!(酒蔵によって、一般見学ができないところもありますので、事前に要確認を!)

モノづくりという視点で見ると、酒蔵が置かれた環境というのは大きな制約条件になります。
雪国、温暖な地域、高地、海沿い、それぞれ与えられた環境の中で、長い年月をかけて、各酒蔵の日本酒が進化してきています。
ちなみに、酒蔵は北海道から沖縄まで、全ての都道府県に存在します!

酒蔵を訪れたら、酒造りの道具や醸造設備を見てみるのも面白いです。
日本酒の製造工程は単純な流れ作業ではなく、各工程で試行錯誤が繰り返されます。目指す品質を達成するために、既成の設備をチューニングしたり、趣向を凝らした機器を導入したり、自分たちでDIYで道具を作ってしまったり・・・。「酒屋万流」と呼ばれる所以でもあります。

このように、蔵の思想、つくり手のこだわりを垣間見ることができるのは、酒蔵を訪れる楽しみのひとつでもあります。

僕は、この繊細な品質の違いを設計して表現することを目指すつくり手の皆さまの弛まぬ努力と技術にいつも感嘆させられています。
また、その機微を感じ取る消費者の繊細さからは、日本人の感性の豊かさを思うのです。

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日本酒は「温故創新」の作品です!

クリエイティブな仕事をするためには自由な発想が必要です。
でも、自由というのは選択しやすい道をとりやすく、新しいアイデアを生むためには一定の制限の中の方が良いとも考えられます。

絵画はキャンバスの中で表現するように、音楽はオーケストラの編成の中から生み出されるように、24時間という限られた時間の中で新しいライフワークバランスが提唱されるように、クリエイティブな仕事は、数多の制約の中で苦しみながら突破しようと生み出されてくるものだと思います。

酒蔵の蔵元、つくり手の皆さまも、その時代背景や自然環境に応じた制約の中で新しいアイデアを創造し、酒屋万流の世界を築き上げてきました。

日本では、およそ1,200の酒蔵が日本酒を製造しています(国税庁「清酒の製造状況等について」)。日本酒の消費数量が減少する厳しい環境の下、各酒蔵が差別化を目指す道をとってきたのは、必然なのかも知れません。
そして、これからも、ますます日本酒は多様化の道を進むことになると思っています。

「温故創新」とは、歴史や伝統をたずねながら、時代にあわせた新しい発想で、モノの価値を創造していくことです。
モノづくり、コトづくりの未来を創る取組みの中で、日本酒というのは、まさに「温故創新」がピタッとはまるプロダクトであり、業界であると改めて感じます。

日本酒は、とてもクリエイティブで思考や五感を刺激する面白いフィールドだなと思いませんか?
もし、クリエイターの皆さまが日本酒に少しでもシンパシーを感じていただけたら、とても嬉しいです!
それでは、またよろしくお願いします!

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