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UK films

イギリス(UK)の映画が好きだ。いや、ドラマやバラエティも含めてで、彼らの背景や気質、もちろん緻密に知っているわけではないし肌で感じたことはないが、皮肉の効いたもの言い、階級社会、各国、都市の特色、そういうものも含めて見ると興味深く異国の感覚を覗くようで楽しい。そして階級社会の抑圧からか、土地の特色が郷土愛となるのか、国別のプライドともいうのか、それらの一部に衝動的なものを感じ、さらにその一部は青春映画にうってつけだと思っている。どうすることもできない衝動に支配されてしまう。それが青春のひとつでもあるし、若さということだろうと思う。そのイギリス(UK)映画の中の、その青春映画の中で、その衝動において、ただ私の感想というか思いを書きたい。

トレインスポッティング

有名な映画。そしてかなり大好きな部類の映画。ざっくりと思えば霧の中から抜け出すことを選択した人の話というか少し傷んだ青春映画かも。この映画はデヴィッド・ボウイが書いたと言われているリフの出だし、イギー・ポップのLust For Lifeで始まり、その場面、感情、衝動はまさしく傷みだと言ってもいいのではないか。この映画はスコットランドのエディンバラの街がとても歴史的で雄大である一方で、労働者階級のアパートメントやドラッグの蔓延、HIV以前の世界での針での回し打ち、薬を抜く苦しみが存在する。いつまでも存在し続けるように見える、実際は暖かい家族があっても、セックスがあったって音楽の高揚には勝てやしないという気持ちにもさせてくれる。いや短絡的に思えばドラッグやセックスと音楽はとてもいいものだろうが、ドラッグもセックスも負の面があるので音楽だけには勝てやしない。そしてそのカオスに塗れた世界は進み、UnderworldのBorn Slippy .NUXXと共に鼓動が走り出すエンディングは最高に盛り上がるしかなく、すべてがそこに集約しているように思える。あれこれ疑問がある人もいるだろう、だが人間なんてそんなもの。全てがクズで全てが素晴らしい。まるで人が滝のように流れ落ちる。揺れ動く。誰かを大きく広げて見てみよう。何故かカタルシスがあり自分もそこにいる。確かにそこにいるんだよ。という気にさせられる映画。気に入っているのはレントンがヘロインを抜く場面のこの曲。テクノらしいテクノでとても気持ちいい。

Dark & Long (Dark Train Edit) - Underworld


ノーザン・ソウル

弱さを知るものの物語。控えめに言っても最高の青春映画のひとつ。そこにあるのはたしかに現実であり、一般的には褒められるものでもないのかもしれないが、イングランドのランカシャーでの階級社会の中、そこに生きていた。それが分かる。弱い私はどうしても表現を曖昧にしてしまうが、それをダブらせるような映画、世界。最高な音の存在は最高の時を浮かび上がらせ、その中に溶ける。私の現実と、誰かの現実と変わらない世界。ノーザンソウルのムーブメントがあったのは必然かと思ってしまう。アメリカのどこかのソウルミュージックのレコードがランカシャーの小さな地域のDJによってかけられ、誰も知らないレコードを求めてアメリカに行きたい。そんな衝動はまぶしいもので、心の衝動や体の躍動はそれらを燃やしてしまう。今とは違いDJといえどもただ次々と選曲しレコードをかけるだけで、それがいい。彼らの見出した新たなレコードをかける。その儀式。そこにはダンスがあり、今見ると形式的のような奇妙にも見えるダンスだが、それはお城や社交界のダンスから続いているもので、日本でもロックンロールやロカビリーのクラブでは形式的なダンスを見る。その躍動はイギリス(UK)の片田舎の少年のすべてが表現されていて爽快感すら感じてしまうほどだ。とてもイギリス(UK)っぽくていい映画。劇中には様々な曲が流れるが、印象に残ったのは鬱屈した主人公が友とノーザンソウルと出会うEdwin StarrのTime、これは後に友となる彼がDJにかけてくれと交渉していたのをトイレの個室から聞いたもので、この曲と彼のダンスは、フロアに行って見ていた主人公の何かに火をつけた。まごうことなきソウルナンバー。さらに祖父の関係で鬱積はたまり、前だけを見て進むことを選択した時のShirley EllisのSoul Timeは淡々としている中でカッコいい。飄々としてるがソウルの芯がある、そんな曲だ。また最初に教えてもらったカバーアップがThe SalvadorsのStick By Me, Babyであることを発見し、それをDJとしてかける。そういう熱狂があるのもとてもいい。そしてそれらとも並び今回載せたいのはこの曲。

Back Street - Edwin Starr


グッド・ヴァイブレーションズ

事実を元にした映画で最高の映画だ。人間の情熱を感じる。北アイルランドのあの頃、IRAとの問題などの想像できないような困難の中でも、ベルファストという場所に生まれた音楽はとてもいいものだった。そしてその仲間もいる。いや、すべてを含めて愛すべき家族とでもいうべきか。パンクの素晴らしさを感じ、その友、家族、愛し愛される女性、守るべき自由、侵されることはないそのこころ、それを感じずにはいられない。何かを得ようとすると何故か何かを失ってしまうこともある。それを越え、掴み進んてゆく。躓いたり倒れることもあるだろう。だがその都度手があったり、光が見えたり、気にしなかったりすればいい。それを見せてくれる。世界が困難でも人は情熱を持てるし突出したものを作ることはできる。小さいレコード店から始まったこの話はイギリス全土に響き、今では世界に響いている。
通して流れる音楽には、パンクにはやられっぱなしだ。劇中で彼の運命を変えるRudiのBig Timeはかけ値なしにカッコいいし、ベルファストから遠征に出るときのStiff Little Fingers軽快なGotta Gettawayは明るい未来を予見しているようだ。失望のステージに少しだけ火を点ける曲、RudiのI-Spyもとてもいい。それらのシーンには北アイルランドの当時の軍事的緊張の映像も使われているし、物語でもベルファストへの帰りにUDAの兵士との悶着もあるが、それが彼らの現実だったと考えると、その行動自体が素晴らしいとしか思えない。そして次のレコーディング時にエンジニアが、この街が生んだ最高の曲と評したThe UndertonesのTeenage Kicks、これでロンドンにレコードを売り込みに行き、結局は後日ラジオでかかり大手レコードレーベルと契約して彼らはメジャーバンドになった。彼らも含め、これらはすべてベルファストのパンクバンドだというのも素晴らしい。そして最後のアルスターホールでのギグへ向けての作業で流れるStiff Little FingersのAlternative Ulsterは希望でもあり最高だ。そしてエンドロールのOutcastsのSelf Conscious Over Youですべては終わってしまうが、この一曲をというと、まだグッド・ヴァイブレーションズがオープンする前に流れる曲だ。パンクではないロックだが主人公の指向性や方向性を感じた。

Outcast - The Animals


これらがイギリス(UK)の青春映画の一部で、図らずも音楽が重要な、若しくは音楽がモチーフの映画だった。私が好きなだけだけではあるが、日本人の私から見れば新鮮に感じることも多い。これに関しては別に思うところもあるけど、ドラッグなどの問題があるのはどの国でもそうだろう。だが、それがこれだけカジュアルなのは時代や場所というものもあるのだろうか。その国々で様々な歴史や問題や幸福や苦しみや叫びがあるが、今回書いた何本かの映画は私にとってその一つ一つで、いくら肉体の時間が過ぎていようが青春なのだ。そして蛇足だが、もう一本の映画にも触れておくことにする。


T2 トレインスポッティング

確かにオレはそこにいた。見る方がそういう感覚。夢遊病者のような覚醒と興奮、リズムとビート、行動と受動、一本のビーム。弾け飛んだそれらは歪な重力でまとまり再起動する。リセットボタンなんかじゃリセットできない。刻み込まれた記憶は高揚と破壊の衝動。狂おしくも静かな時間の進みは爆裂を呼び醒ますための普遍。絶対零度の安らぎなんてありえない現実の刻み。おっさんになったあいつらの物語。まごうことなき青春映画。トミーへの追憶はするが、結局本当の追悼はヘロインという相変わらずクズな場面にかかるのはUnderworldのSlow Slippyで素晴らしくもある。それはその音楽だけではなく彼らの堕落がだ。いつまでもそれは誰にでも棲むことで、別に大人になる必要なんてなにもない。続編ではあるが遠い時間が過ぎていて、一見変わったように見える世界は何も変わってはいなかった。ただ状況の変化があったり時間が過ぎただけ。エンディングに描かれるものは明確に前編のオープニングや前編の同じシーンにつながっていて、二度Prodigyのリミックスによるイギー・ポップが響く輪廻。

Lust For Life (The Prodigy Remix) - Iggy Pop


イギリス(UK)の映画を最近でもつらつらと見る、都会派のドラマやバラエティとかではインド系の人の活躍や泥臭さを排除しているような、上記のものとは違った一面も見られる。それも含めて歴史の深さや重さ、世界を股にかけていたヨーロッパの一つの国という印象を感じる。文化的にも国力もとても強大で、その力には魅力がある。現在はグローバルだとかなんだとか、そんなことを言われていて、世界は少しずつ均一化されようとしている気もする。それなのに最近の作品でもイギリス(UK)というくくりでは基本的な気質は変わりはしない、その強さも好きだ。

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