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#16 春の音ひびく

春風運ぶ 種ひとつ
あなたの背中にくっついた

真昼の空と
マンホールから響く水の音

どこか遠くで
車の走る音もする

窓の開かれた教室に
真昼の音が
風と共に送り込まれる

シャーペンの先が
白いノートを走るたび
黒板の上を
白いチョークが走るたび

さよならの音が
わたしの中でこだまする

教科書をめくる音がして
白昼夢から目覚めると
頬に残った夢の跡

微かに残る本の匂いに
見上げた先のあなたの背中

春風運ぶ 種ひとつ
あなたの背中にくっついて
こっちをじっと見つめてる

指を伸ばせば
届く距離
されど伸ばせぬ
拒む身に

行き場の無くした手のひらは
髪の毛を一房
はらりと落とす


窓から降り落ちる
暖かな日は
さよならを迎えるこの部屋に
今日も燦々と
春の足音を響かせる

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