#9 秋めく日々に

夜風に揺れるすすきの音
黄金に輝く月の光に
色を加える秋の虫

アスファルトを蹴りたてながら
雨を含んだ風の匂いに
きょうの日々を振り返る

木からこぼれた金木犀が
地べたに宇宙を作り出し
在りし日の想い出を飾り立て

道端の黒猫の瞬きと
夜空に貼りつく一粒の
火星の赤が重なって
見透かされまいと背を向けた

裸足で踏んだベランダの
深夜3時に吐く息は
夜風に溶け込み消えてゆく

朝焼けの、明けの明星貼りつく空に
すうっと腕を伸ばして掴む
潤んだ瞳からにじむ涙は
朝日をそっとぼかしてゆく


秋のせつなさ手のひらに
乗せて歩く毎日が
紅葉の如く色づきますよう
願いを込めて

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