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#4 一時停止の必要性

真っ直ぐに向いていた視線は
いつの間にかあげられなくなって
スキップしていた足は
もう歩くことも苦しくなった

希望、ということばは
かつてページの端を折ってまで
毎日見返していた筈だった

桜の花が咲き乱れ、
青い葉が色付き、
やがて散ってゆく
繰り返される日々の変化を横目に
いつからか

立ち止まることをやめていた

走り続けているうちに
水がいることを忘れ
食べることを忘れ
目を瞑ることも、歌を歌うことも
何もかも忘れてしまっていた

動けなくなった手足に
ぽつぽつと夜空から雨粒が落ちる
昼間のコンクリートの熱がじわじわと
萎れたからだをあたためる

目線の先の小さな花は
天からの恵みを受けていた

走馬灯のごとく
鮮やかにみえた日々が脳裏に浮かぶ

花には水が必要だと
ずっと知っている筈だった

駆け巡ることが正義ではなく
止まらぬことが立派なのではない
道草をしても、昼寝をしても
歩みを止めてもよいのだ

立ち止まるからこそ
移りゆく世界に心を震わせ
たなびく雲の美しさを知り
口ずさむ歌に励まされ
息をすることができるのだ

燦々と朝日が昇る

また、きょうという日がはじまってゆく
曇天はいつしか去りゆき
空には希望の虹が輝いている

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