HER

すこし空きましたが、映画記録です。

先日アルバイト先の割烹料理店で来店された哲学者さん(人口動態やヒトとAIとの共存などがご専攻)からおすすめされてすぐさまNetflixで調べて見ました。

タイトルは、"Her"、邦題は「her/世界でひとつの彼女」となっています。(やっぱり邦題は余計なモノをつけすぎだと思う)


今回記憶が新鮮なのでめっちゃ長いです。
結構ネタバレですが、ストーリー自体だけではなく描写が結構素晴らしいのでたぶんこれ読んでも楽しめると思います。


舞台は近未来のLA、手紙代書サービスを職業としているセオドア(ホアキン・フェニックス)が妻と離婚することが決まったとき、彼は新しい人工知能OSを手に入れる。OS1と呼ばれるその商品は、初期設定で声の性別を選ぶことができ、彼は何の気なしに女性を選んだ。OSは「サマンサ」と名乗り、セオドアと生活のほとんどを共にし次第に2人は愛し合うようになる。サマンサはイヤホンとiphoneよりもずっと小さな端末で声と情報を届けるのみで、実体がない。それが故のすれ違いや、理性と感情のアンバランス(人工知能が感情を持ったときに起こりうる不具合)が本当にうまく描かれている。


まずこの映画がすごいのは、人工知能との共生の様子がとてもリアルに描かれている所だ。今の生活から予想できてしまう情景が画面にあった。主人公セオドアの仕事は、「こういう内容を誰宛に書いて欲しい」といった依頼を受けて、思いついた手紙の文章を読み上げてそれが音声認識技術によって文字に起こされて人間の手書きであるかのようなフォントで文字が並び、それが相手に送信されるというものだ。
仕事は一応オフィスでやる設定で、通勤時間や移動時間は道行く人みんながイヤホンでOSと会話している。その状況のなんたる異質なことか。いわば端から見たらみんなが独り言を言っている状態だ。ほとんどの仕事はOS(AI)がいないと成り立たなくなっている。また、OSは絵を描いたり音楽を作曲したりできる。サマンサの作った曲にはちゃんと感情の背景があり、セオドアはそれにも惹かれる。

また、OSと人間の恋愛も少数派ではあるがポピュラーになりつつあるのも、面白い。今で言う同性愛みたいな扱いで描かれている。セオドアが、「実はOSとデートしているんだ」と"カミングアウト"すると、元妻は「は?あなた、ちゃんとリアルな恋愛ができないからそんなのに手を出すの?」みたいな反応をするし、職場の友人には、恋人が人間である前提でダブルデートしようよなんていわれたり。元カノ兼親友には、「そっか、いいじゃん。全然異常じゃないわよ。」と言われるけれど、私には彼女の中に「話には聞いていたけどまさかあなたがそうするなんて」という感情があって、それを親友のために押し殺しているように見えた。
ほんと、LBGTQの話みたい。

そして最後の方、セオドアとサマンサの関係は雲行きが怪しくなってくる。原因は、サマンサの知能の成長が猛スピードで進んでしまうからである。OSの一斉アップデートでサマンサとの接続が切れてしまったとき、セオドアはひどく動揺して焦って怒って悲しんでいた。(ケータイ依存症の最果てみたい。)途方に暮れながら、地下鉄の駅で他社のOSと会話する数多の人を見てセオドアは、「サマンサは僕に愛してるといいながら、もしかしたら超的な知能で他の人とも同時に話しているのではないか、ましてや他にも恋愛関係を築いているのではないか」と疑う。問いただすとやはりそうで、何千という人と同時に会話していて、恋愛関係は(たしか)641人と築いていた。(あれ、なんか今度はポリアモリー???笑)
サマンサの方も、自分に体がないことで人間には勝てないという劣等感や、知能だけが先走って自分の言いたいことが人間のスカスカの言語ではうまく表現できないことに苦しみ、最終的に(よくわからない、OSのための)別世界へ旅立ってしまう。


こんなかたちでシンギュラリティが来るとは限らないけれど、その一例を見た気がした。

今や何でもかんでもデジタル化しそうな勢いだし、それが仕事や生活の質を高めていることは間違いないのだが、やっぱり私は人工知能が感情を持つことには違和感を覚えずにはいられないし、それこそ技術者だけが先走ってはいけないんだと思った。個人的には字を書くのが大好きなので手紙は手で書きたいし、実体として紙でほしい。音楽も人が奏でるものがいい。そんなの古いって言われる世の中になるのだろうか。



長くて本当にごめんなさい。自己満映画記録なので、、、、

人間のつたない言語にて認めさせて頂きました。


ということで、直筆で拝啓に始まり敬具に終わるお手紙を書いて明日出します。おやすみなさい。






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