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チョコレートバー


冬の冷たい夜に 紅茶の美味しいカフェ 
オレンジ色のライトの下で
私が「ごめん。」って言って、 
あなたは「じゃあ、昨日のことは忘れよう。」って言った。

ワスレヨウ・・・わすれよう・・・

いつもは買わないレジ前のチョコレートバー。 
すぐにカゴに入れたのは
パッケージに「忘れろ!」の文字があったから。

でも やっぱり わたしは 食べなかった。
「忘れろ」は 変わらず 冷蔵庫で 
命令形の「忘れろ」のまま。 


宙ぶらりんの わたし 
あなたの 「車、売ろうと思うんだ」に
「じゃあ、もう 私を空港に 迎えに来てくれないし、もう 一緒に ドライブも しないってことね。」
って、言えなかった。

一日のメールの最後の「おやすみ」が
どれだけ わたしの心を あつくしてるか
伝えられなかった。


飛行機の出発前に、
勢いで 胃に落とし込んだ、「忘れろ!」。
もう 賞味期限は 切れてた。


次に会う時、
あなたの隣には あの子がいるでしょ。
きっと 私の顔は ちょっとゆがんでるけど 
それは あのチョコレートバーのせい。
お似合いのカップル、
私も 本当に 嬉しいんだから。

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