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無題

今朝はやけに明るい日差しの中で目を覚ました。天井は昨日よりも白く、陽の当たるサボテンの鉢が眩しそうにしていた。気怠い身体に対して、気持ちは明るく、灰皿に乗った2本のジタンの眼差しに、乾いた喉が潤いを求めて、もう一度眠りの中に私を誘うのだった。
陽の光は、もはや夏のそれではなく、新しい季節の飛沫をあげ、齧ったリンゴから滴って落ちていく。
さよなら、海の鳴き声。さよなら、赤い口紅。そういう風に夏を忘れて、レースのカーテンをヴェールに、白いTシャツと洗いざらしのデニムで、裸足にピンクのブーツを履こう。そうして、誰かの頬っぺたにキスをして、履かせてもらった毛糸の靴下のつま先をベッドの縁にぶらぶらさせるのだ。

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