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非情怪談

 私の彼氏はお金持ち。ドライブをしたあと、地上100階のタワーマンションで、一夜を共にすることになっていた。

「ここだよ、僕の新居は」
 彼が誇らしげに言った。

 聞きしにも勝る立派なタワマンだった。セキュリティを通過した時、管理人が言った。

「大変申し訳ありません。現在エレベーターの不具合が見つかり修理中です。すみませんが、今日は非常階段を御利用下さい」

「ウソだろ?僕の部屋は100階なんだぞ!彼女を連れて100階まで歩いて行けってか」

 彼は怒りに震えた。私は彼をなだめた。

「仕方がないわね。歩いてのぼりましょう。一気にのぼると疲れるから、1つずつお互いに怪談話をしながらゆっくり行きましょう」

 我ながら変な提案だったが、彼はすんなり受け入れてくれた。

 交互に怪談話をして、一階ごとに立ち止まりながら、上へ上へとのぼった。

 そしてとうとう100階までたどり着いたとき彼が言った。

「ごめん、車の中に部屋の鍵を忘れてきたようだ」


(410字)


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