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短編 | 運試し擬人化


 明日、僕は死ぬつもりだ。僕が死んだって誰も悲しむ人はいない。
 他人から見たら、僕はきっと、いつも冗談を言い、ガハハと笑う陽気な奴だろう。しかし、それは本当の僕ではない。光になるくらいならば、すべての輝く事物を包摂する闇になりたいと常々思っているほどだ。
 
 しかし、僕は死ぬ前に1つ、自分の運を試してみたい。もしも明日、一滴の雨粒になりながらも、地面に落ちることなく、空中を漂うことができたならば「生きる」。できなければ「死ぬ」。もちろん人間の体を失うということではない。雨粒の一滴に完全に憑依することだ。擬人化と言ってもよい。

 翌日、気がつくと僕ははるか上空にいた。寒い。早く下に落ちてしまいたい。僕は地上に落ちたら死ぬということを忘れていた。ひたすら早く落ちたいと願った。

 あと50m。

 あと10m。

 地面まで間近だ。あと1mというところで突風がふいた。僕はあおられた後、朝顔の葉の上に落ちた。
 僕は死ぬことができなかった。


(414文字)

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