見出し画像

短編 | 告白雨雲

 今日はお休み。平日は学校の宿題を終わらせることで手一杯。だから休みの日くらい自分の勉強をしよう!と意気込んでいた。真面目でしょ?
 しかし、すぐに睡魔に襲われた。

 英語のリスニングをしていたんだけど、なんか面白くなくて、退屈なんだよね。いかにも作り話っていう感じで。
 電話の鳴る音とか、鳥の囀ずりとか、そういう音を収録していて、作った人は苦労したんだろうけど、どことなく人為的なんだよね。

 あれっ、私いつの間にか眠ってた。スマホを見たら、もうすでに4時をまわっていた。
 この時間になっちゃったか。4時を過ぎると、なにをやるにも中途半端なんだよね。今さら外へ遊びに行こうという気持ちにもなかなかなれなくて。
 かといって、風呂に入るにもちょっと早いし、夕食をとるにも少し早い。まぁ、とりあえず、コーヒーかお茶でも飲もうか?

 私は自分の部屋を出て、リビングへ向かった。母がいた。

「ねぇ、亜希子、今ね、告白前線が近づいているらしいわよ」

「そんなの嘘か都市伝説でしょ」

 でも、「ひょっとしたら」なんていう思いもあって、一歩外へ出てみた。

 すると不思議なことが起こっていた。次から次へと、ピンク色をしたハート型の雨粒が降っていた。両手で雨粒を受け止めた。

 そうだ、今からA君に告白しに行こう。

 私はお気に入りの麦わら帽子と、紫のキャミを着て、A君のうちに向かうことにした。告白するのに遅すぎるなんてないはずだよね。


(600字)

こちらの企画(↓)に参加します。

#毎週ショートショートnote
#告白雨雲
#恋心
#告白前線

この記事が参加している募集

#忘れられない恋物語

9,153件

#私は私のここがすき

15,694件

記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします