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黄泉路のバガボンド

 慶応13年 東海道 元 尾張藩 名古屋。清州城の復活で往年の活気を失えど、まだ多くの町人が暮らす。第六天魔王の憲兵による厳しい監視が外の混沌から国を守っていた。

「聞いたか堺の話」「怪魚の話か」「商人連合め、いい気味だ」

「若いの!お前も交ざらんかい」
他から離れサーベルの手入れをするトビに声がかかる。

「どうだ憲兵暮らしは?ええ?」「アーまぁまぁですかね」
「そうか。おまえ生まれは武士か?」「アー武士というか農民というか」
「ま、そんなもんだろうな」「ハイ」
「「…」」

詰所に交代の憲兵が戻ってくる。
「あ、そろそろ交代ですね」「おっ、頑張ってな」「ありがとうございます」

トビは詰所を出て名古屋城方面にむかう。

「糞ッなんだってこんな!糞ッ」

“生死“も生前の身分も問わない、規律と実力のみが求められる。そんな第六天魔王の憲兵として名古屋に出てきたトビだが職務は落ち着いたものだった。信長の元で尾張は平和であった。

【続く】


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