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#小説
銃とPHSは鳴り止まない
『あなた、本当は死産だったのよ』
幼い日に母からこの話を聞かされたことは、俺の人生観に大きな影響を与えたように思われる。どうせ死んで生まれた身、そう考えるとふっと全身から緊張が抜け、所詮たまたま拾った命だと思って歩の悪い賭けにも乗るようになった。
『それをお医者様が救ってくれたのよ』
大人になってこれが全部俺を医者にするための嘘だったと分かった今でも、その思いは変わらない。そしてこんな世
「おうちはどこなの」と少女は問うた
東宮生まれ東宮育ちの6年生、桂木杏奈はこの町が大好きだった。だから自販機コーラ一掃事件や血みどろ軍手大量発生事件といった難題も解決してきたし、転校生のマリちゃんに町を紹介して馴染んでもらうのもぞうさもないことだった。そうしてスーパーの店長に「杏奈ちゃんは東宮の顔役だね」なんて言われて以来、杏奈は得意げに自分を“かおやく”と呼ぶのだった。
夏休みのある日、おつかい帰りの杏奈の目に見慣れない姿