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【ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。】辻村深月
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※インスタに投稿した記事より、一部加筆修正してお届けいたします。
大好きな作家の一人、辻村深月さんの作品を久し振りに手にしました。辻村深月さんのデビュー作で、言わずと知れた名作『冷たい校舎の時は止まる』のレビューを先に書いておきたいと思っていましたが、またいつか再読した時にしようと思い直し、今読み終えたばかりのこちらの作品について書かせていただくことにしました。
辻村さんの魅力の一つとして、個人的には、女性を描くことの秀逸さが挙げられると思っています。
とは言え、ミステリも思春期の群像劇も、恋愛や友情も、社会問題も、あらゆることに秀でている辻村先生です。そういった様々なファクターを、瑞々しい感性と心理描写を伴いつつ、上手く絡めて築き上げる構成力こそが一番の魅力かもしれませんが、本書は主に『女性』に焦点を絞り込んだ作品と感じました。
女性……いや、本作の感想では、あえて「オンナ」と表記すべきでしょうか。
良くも悪くも「オンナ」の持つ様々な特性を、これでもかという程に盛り込んであります。
友情、親子、恋愛、仲間、仕事……比較や嫉妬、羨望、同情、嫌悪、理解、駆け引き……それぞれの立場から相手を値踏みし、その場を上手く取り繕う「オンナ」達。
本音を隠して笑顔で付き合う女性同志の面倒臭い関係に、時折リアルと照らし合わせてはドキッとしつつも、サクサクと読めてしまう物語です。
無為なようで、ややもすると冗長にさえ感じてしまうかもしれない前半の「オンナ同志」のやり取りの中に、後々の伏線に繋がるような何気ない記述も多々含まれております。
この辺りは、さすがミステリ作家でもある辻村深月先生、ただただ感服するばかりです。
主要な人物は二人、幼馴染のチエミとみずほ。親友という位置付けながら、互いに友情という枠に収まりきらない感情を相手に抱いています。
農家でのびのびと育ったチエミと、良家で厳しく育てられたみずほ。大人になると、二人の違いはより拡大していきます。
チエミは、母親との共依存から離れられず、小さな視野の狭い世界で、自分の周囲のことにしか関心のない地味な「オンナ」になっていました。
一方のみずほは、結婚して東京で暮らし、ライターとしても活躍する、いわゆる「出来るオンナ」です。
さて、ここで簡単に物語を要約しますと、チエミが実母を殺してしまい、姿を消したという事件について、みずほが真相を探り、チエミの所在を探すという話です。
その中に、実に様々な「オンナ」が登場し、その絡みがとても読み応えがあり、目が離せないのです。もちろん、ミステリ要素も満載です。
そして、最後の最後に、この作品タイトルの際立った秀逸さを知ることになります。いや、勘の良い方は、その前に意味は分かるでしょう。
しかし、この片仮名で一つずつ読点が打たれてる表記の意味を知るのは、読了した人だけの特権なのです。
悲しさと切なさ、そして、救いと希望で胸が熱くなりました。
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