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対話体小説集

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地の文を使わず、全編会話文だけで構成された物語のことを、対話体小説といいます。 代表的な作品として、マヌエル・プイグの『蜘蛛女のキス』や恩田陸の『Q&A』、小林泰三の『アリス殺し…
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#毎週ショートショートnote

警部、お願いします!

【scene1】

「警部、お願いします!」
「これは、なかなか厄介なヤマだな」
「ということは、何か分かったのですか?」
「あぁ、幾つか興味深いことがな」
「……と言いますと?」
「先ず、これは明らかに単独犯、又は複数名による計画的、若しくは衝動的な犯行だ」
「なるほど。と言うことは……」
「そうだ。犯人は、おそらく内部関係者、或いは外部の人間だろう」
「だとすると、仰るとおり、厄介なヤマになり

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警部、お願いします!(11)〜毎週ショートショートnote〜

警部、お願いします!【scene11】

(本文410文字)

「警部、お願いします!」
「ほぉ、見立て殺人か。俺も初めてだ」
「見立て殺人……ミステリに出てくる、童謡とか伝説に準えて事件が起きるという、アレですか?」
「分かってるじゃないか」
「で、何に準えているのですか?」
「殺人数え歌だ」
「ど、どういうことでしょうか?」
「一つ、死因は窒息死!」
「え?」
「分からんのか? イチゴだよ。ガ

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警部、お願いします!(10)〜毎週ショートショートnote〜

警部、お願いします!【scene10】

(本文410文字)

「警部、お願いします!」
「死因は分かったか?」
「はい、米を喉に詰まらせ窒息死、事件性はない可能性が高いとのこと」
「いや、これは撲殺だ」
「え? な、何故…」
「見ろ、辺り一面ご飯だらけだろ?」
「自治会の祭りで配るおにぎりを、大量に作っていたそうですので」
「つまり、凶器はおにぎりだ。杖のような棒状にまとめると、そこそこの鈍器に

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警部、お願いします!(9)〜毎週ショートショートnote〜

警部、お願いします!【scene9】

(本文410文字)

「警部、お願いします!」
「分かってることを教えてくれ」
「はい、ガイシャは佐藤太朗、二十二歳の大学生。ホシの田中次郎は、吹奏楽部の一つ後輩。二人は同じ高校出身で、高校時代も吹奏楽部で先輩後輩の間柄でした」
「なるほど、何者かによる暗殺……厄介な事件だな」
「動機は、アルハラです。ガイシャは下戸の田中に日常的に飲酒を強要し、断ると暴力を

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警部、お願いします!(8)〜毎週ショートショートnote〜

警部、お願いします!【scene8】

(本文410文字)

「警部、お願いします!」
「何だ、この床は! マーガリンでも塗ったのか?」
「いえ、マーガリンではなくバターです。ガイシャは足を滑らせ、打ち所が悪く、ほぼ即死。ガイシャの友人のユーチューバーがイタズラで床にバターを塗り、撮影していた線で調べております」
「何故、そう思う?」
「実は、カメラが二箇所に仕掛けられており……」
「そうじゃない

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警部、お願いします!(7)〜毎週ショートショートnote〜

警部、お願いします!【scene7】

(本文410文字)

「警部、お願いします!」
「なんだなんだ、こんな所で銃殺か?」
「まだ調査中ですが、おそらく刺殺です」
「しかし、この匂いはなんだ?」
「まだ調査中ですが、酢の匂いかと」
「それは分かっている。知りたいのは理由だ」
「まだ調査中ですが、ガイシャはこの店でカレー屋を経営しており、客と揉めていたそうです。こちらに、らっきょうと福神漬けのスト

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