技術的困難を乗り越えた先の世界の話をしてみる

ピアノを弾くことは、身体的なテクニック面で非常に困難であるけれど、何年、何十年と研鑽を続けることで、そうした技術的困難を一つずつ乗り越えていける。

もちろん、技術的困難を乗り越えることはどうしても表面的に目立つので、テクニックのための練習方法が注目されがちだけど、その先にあることを早めに知って、備えていくことが、よいピアニストになるための近道になるのは間違いない。

結論から言えば、技術的困難を乗り越えた先では、「自分の内面に何を持っているか」が問われる。

例えは悪いかもしれないが、技術的困難を乗り越えることは、十分なお金を手に入れることに似ている。

お金があれば、お金で買えるものや解決できる悩みはなくなる。

しかし、それでゴールかと言えば、きっとそうではなくて、その先に、いかにお金を使うかが問われてくると思う。

どんなにお金があったところで、自分が食べられる量は変わらないし、所有する物──例えば着られる服や過ごせる面積など──なんて、人間一人分には限界がある。

そして、お金が有り余っている状態は、そのお金があってもなくても同じといえる。

技術もそうなのだ。

どんなに複雑な音符を並べることができても、その先に語るものがなければ、それらはただの楽器の音にしかならない。

音楽で伝えたい愛があるか?

音楽で語りたい思想があるか?

音楽で表したい世界があるか?

作曲家がなんとしてでも伝えたかった魂を音楽に込められたとき…その人は初めてよいピアニストとなる。

技術を磨くことももちろん大切だけど、同時に、人間を磨くことも、よいピアニストになるには大切であると思う。

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