ピアノの先生なら人前でソリストとして演奏するべきだと思う理由
人前で演奏しないピアノの先生があまりにも多い。
果ては、レッスン中、生徒の前ですら一音も弾かない先生まで存在する。
ピアノを指導するとき、確かに言葉で音楽表現や演奏技術を説明することは大切だ。
しかし、音楽表現や演奏技術について、言葉では如何様にも言える。
まして、学習途中の未熟な生徒に対してなら(未熟な状態では何が正しいのか正しくないのかの判断は難しいため)、それっぽいことを言うだけでレッスンをこなすこともできる。
口先だけでお金が稼げるなら、そんな楽なことはない。
そんな先生が自分の本当の実力を隠すために、人前での演奏を避ける。
教室の発表会などで仕方なしに演奏しなくてはならないときは、他の先生と一緒に連弾をしたり、アンサンブルを組んだりと、あれこれアイディアを出して、何とか自分一人でスポットライトを浴びないようにしている。
そんな姿は、お花畑で世界平和を語る人のように見えてしまう。
舞台の上は本当にキツイ。
演奏はその人の全てを現してしまう。
音楽についてどこまで知っているか、演奏技術についてどこまで習得しているか、教養や素養や、日頃の生き方まで…全て演奏に溶け出してしまう。
素敵なドレスやスーツを着て、バッチリメイクをして、城壁を固めたところで、演奏が始まれば、そんな城壁は何の役にも立たない。
城壁の中の世界を見せてこそ、ピアニストとして、ピアノの指導者として存在できるのが本来ではないだろうか?
人前で演奏しない先生は、人前で演奏することの本当の難しさや魅力を、知らない。
コンクールにどうやって準備していくか、審査の厳しさ、舞台での振る舞い方を、知らない。
リサイタルの準備を、どのくらい真剣に、どんな戦略で、どんなペースでしていかなければならないか、知らない。
いくつものプログラムをどうやって育てていくか、知らない。
本番のメンタルコントロールや、本番中のアクシデントの対処法など、知らない。
お客様の期待と、厳しい耳と、温かな拍手を、知らない。
知っているのは、自分の部屋で自分一人で楽しくピアノを弾くことだけ。
もちろん、それも素敵な世界だけど、もし生徒が自分の部屋の外で演奏したいなら、先生はその期待に応えることはできなくなる。
人前で弾くことも、ピアノを弾く人の多くが目指してみたい挑戦であるのだから、やはり先生も人前で、それもソリストとして、演奏することを続け、経験を積んでいくことは必須だと思う。
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