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ないのはデータじゃない。仮説なんです。

なくてもいいけど、あれば人生が豊かになる。そんな雑貨のような知識を集めた「知識の雑貨店」というマガジンを運営しています。

そんなマガジンの2本目である本作は、学生さんでも新卒さんでも、誰もがデータの力を活用できる、そうするともっと人生が豊かになる、という話なのですが、データそのものの話には一切触れていません。

というのも、データの力を活かせないのは、多くの場合データ分析が難しいからではなく、まず仮説を考える、ということをしないからだと思うのです。

「ニュートンのりんご」はなぜ有名?

ニュートンは、りんごが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を思いついたと伝えられます。それが本当か嘘か、は解りませんが、興味深いのはなぜこの話がこのように長い間語り継がれているのか、ということです。きっとそこには、多くの人が「この話は語り継ぐべきだ」と考えた理由があるに違いありません。

それは「仮説の重要性」なのではないでしょうか。地球のような質量の大きいものが、他のものを引っ張る力を持っている、という万有引力の法則は、数々の実験や計算で正しいことが証明されています。しかし、その結論は、実験や計算、つまりデータの解析を通じて導かれたわけではありません。むしろ最初に結論=仮説があって、それを証明するためにデータの解析が行われたのです。

大きな発見というのは、必ずこのような順番で成し遂げられます。まず最初に「仮説」がなくてはならないのです。そして、優れた仮説というのは、部屋にこもってデータとにらめっこしていたのでは出てきません。むしろ近所の公園に出かけ、木の下で休憩しているときなんかに、何かのきっかけでふっと頭に沸き立ったりするのです。そう、まさにニュートンのりんごのような。

いきなりデータの森に飛び込むと迷子になる

総務省統計局のウェブサイトに行くと、膨大な数のデータが閲覧できます。例えば、エアコンを2台持っている家庭と車を2台持っている家庭だと、どちらが多いか、などというデータまで手に入ります(ちなみに車です)。

統計局のホームページに限らず、インターネットの普及によって、私たちが手軽に見ることのできるデータは爆発的に増えました。しかし、だからと言って、いやだからこそ、そこにいきなり飛び込んでしまっては広大なデータの森で迷子になってしまいます。

車を2台持っている家庭は、エアコンを2台持っている家庭より多い。それがわかったとして、いや、だからなんなんだ、という感じでしょう。都会に住んでる人には少し意外に感じられるかもしれません。地方に住んでいる人からすると、そうだろうね、と言ったところでしょう。いずれにせよ、以上。です。そこから何も生み出すことはできません。

このように、だからなんなんだ(so what?)、というデータは、実はビジネスの現場には結構沢山あります。時間をかけて分析をしても、レポートをして終わりになってしまい、何の行動にも結びつかないようなデータです。思い当たるフシがありませんか?そうしたレポートの作成者は、多くの場合データ分析を始めた時点で、すでに迷子になってしまっています。仮説を持っていないからです。

「だからなんなんだ」レポートが生まれるプロセス

例えば、noteでヒット作品を書きたいと思ったとします。インターネットを使ってデータを収集し、ヒットするであろうテーマを見つけてみてください。

おそらく、多くの人は、まず検索をするのではないでしょうか。すると、ヒットするnoteの書き方指南のようなコンテンツがいくつか出てくるでしょう。しかし、それは多くの場合サンプル数が限られたデータです。先ほどのエアコンと車の例で言えば、友人数人にエアコンと車の保有台数を聞いて、「エアコン2台保有の方が多かった」としているような情報です。

そこで、より客観的なデータを手に入れようと、例えば統計局のウェブサイトなどに行ってみるとします。しかし、目の前に広がるデータの森はあまりに広大です。何から調べていいかわからないので、とりあえず興味の赴くままにそれらしいものを当たってみる。へー、面白いな、と感じたデータをまとめてみる。このようにして、「だからなんなんだ」レポートは出来上がります。

アンケートをとるという手もあるでしょう。ツイッターのフォロワーなどに、「どんなnoteが読みだいですか?」と聞いてみる。しかし、そもそもフォロワーの多くは自分が書いたnoteを読みたいと思っているわけではないでしょうから、そう言われても困るのではないでしょうか。また、仮に沢山返事が来たとしても、意見がまとまる可能性は低いでしょう。ランチどこ行く?ですら、みんなから意見を聞いていてはなかなかまとまらないですから。

仮説を証明するにはどんなデータが必要か?を考える

そこで仮説です。読まれるnoteの背景には○○があるのではないか、であればテーマは○○がいいのではないか、という仮説をまず考えるのです。例えば、私であれば以下のような仮説を考えます。私はビジネス系の書き手ですので、その枠の中で考えています。

 1. 流行りのトピックに乗っかったテーマ

 2. 王道、だけど簡単な読み物がなく、これまでとっつきにくかったテーマ

 3. 「そうなんだよね」と共感を集めるようなテーマ

 4. 意外性のある、何それ?と感じさせるようなテーマ

そして、それぞれのテーマを具体化して、ツイッターでアンケートをとってみます。実はまさにこのnoteのテーマが、そんなアンケートの結果です。こちらが実際のアンケート。王道、だけど難しそうでとっつきにくい「仮説」というテーマを、やさしく解説してくれそうな2番目の選択肢が支持を集めています。

仮説は間違っていてもいい

さて、このように今回はツイッターでアンケートをとったわけですが、他にもこうした仮説を検証する方法はいくつもあります。

・仮説1〜4について、それぞれ類似のnoteを数十個見つけて来て、それぞれの「スキ」の数をカウントし合計して見る

・「仮説 立て方」「鬼滅 ビジネス」などで検索して見て、検索サジェスチョンやヒットするサイトの多い少ないを比較する

・同じくツイッター検索してみて、関連するツイートを数十個ピックアップし、いいね!やRTの数を比較する

などなど、無料ですぐに実行できるものに絞っても、このようにいくつも選択肢を洗い出すことができます。

また、最近では、個人が安価で実施できるインターネット調査サービスもあります。このように自分で調査を実施して得られたデータを1次データ、統計局など、誰かが実施した調査の結果を2次データと言いますが、内容によってはそうした2次データを頼ることもできます。

いずれにせよ、仮説さえあればそれを証明するデータには事欠かないのがインターネット社会ですので、仮説が間違っていることを恐れる必要はありません。間違っていたら別の仮説を試せば良いのです。それもまた間違っていたら、さらに別の仮説を考えればいい、というわけです。

「良い仮説を思いつく」ためには「インプットする」

でも、と思うかもしれません。その仮説が思いつかないんですよ、と。確かに、良質な仮説を考えるのは簡単なことではありません。しかし、幸いコツがあります。盲点、と言っても良いかもしれません。それは「情報に触れる」「インプットする」ということです。

インプットなしにはアウトプットは生まれません。仮説は何もないところかはら生まれないのです。仮説が思いつかない、という人は、アウトプットをする前に十分なインプットをしているでしょうか。

すでに自分の中にある情報をさぐり当てることで、あるいはそれに新しい情報と掛け合わせることで、仮説は頭の中に沸き立ちます。いずれにしても、「情報に触れる」「インプットする」ことが不可欠なのです。

インプットされた情報は、知識になり頭にストックされます。しかし、それだけではなく、眠っていた知識を呼び覚ましたり、知識と知識を結合して新しい知識を生み出す「刺激」にもなるのです。

情報のインプットには様々な方法があります。関連する本を読む、というのも一つのインプットです。ライバルや先行者が何をやっているか調べる、というのも有効な手段です。そんな中でもっとも手軽でおすすめなのが、それを届けたい対象者に直接会って話を聞く、ということです。例えば、noteを届けたい対象者が若いビジネスパーソンであれば、実際に若いビジネスパーソンに会って話を聞くのです。

「消費者インタビュー」は仮説の導火線

企業のマーケティング担当者はよく「消費者インタビュー」を実施します。私は長らくマーケティングの仕事をしているので、過去に幾度となくそのようなインタビューを体験しました。

そうしたインタビューの目的は、「こんな商品がヒットするのではないか?」「こんな広告だったら受け入れられるのではないか?」という仮説を立案することです。そこで生まれた仮説は、その後アンケート調査で正しいかどうかチェックされ、最終的に商品や広告に反映されます。

ポイントは、アンケート調査を実施し、そのデータを分析する前に、しっかりと仮説を立てておく、ということです。そして、そのためのインプットとして、消費者に会って直接お話を聞くのです。

このプロセスはとても「万能」なので、あらゆるビジネスで応用できます。マーケティングを生業としている人は、割と業界を超えて転職することが多く、私も航空会社→日用品メーカー→自動車メーカー→通信・インターネット企業と渡り歩いています。それもこれも、この仮説からスタートする、という考え方が、幅広く万能に応用できるおかげだと思っています。

さて、仮説を考えてみましょう

仮説からスタートする、という考え方の応用範囲は、何もビジネスだけに止まりません。ここでご説明したようにnoteのテーマを考えることもできますし、ニュートンのように物理の法則を発見することだってできてしまうわけです。

お仕事の企画でもよし、プライベートの情報発信でもよし、なんでもいいので一番考えやすいテーマで、自分の「仮説」を考えてみてはいかがでしょうか。そして、そんな仮説を証明するためのデータを探してみましょう。そうすれば、これまで無縁だと思っていたかもしれない、偉大な「データの力」が皆さんの日常に舞い降りてきます。

難しい?なかなか思いつかない?そんなときは、人の話を聞いてみましょう。ライバルが何をやっているか観察してみましょう。本を読んでみましょう。いや、もっとカジュアルに、外に出て街や公園を歩いてみましょう。ニュートンにりんごが落ちてきたように、みなさんにも大きな仮説の種が落ちてくるかもしれません。

おわり

These wonderful photos were all taken by Priscilla Du Preeze.

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通信会社のマーケター。←ヤフー←アウディ←ユニリーバ←ニュージーランド航空。連載に「マーケティング神話の崩壊」(2019年)、著書に「デジタルマーケティングの実務ガイド」(2018年)「たとえる力で人生は変わる」(2019年)など。NewsPicksアカデミアプロフェッサー。

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コメント (1)
興味深い話です。
機会があれば直接伺いたいものです。
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